メルセデス・ベンツの中核モデル、Eクラスに、「ナイトパッケージ」と「AMGライン」を採用した「Night Edition」が加わった。今回は2.0リッタークリーンディーゼル直列4気筒ターボエンジンを搭載する「E 220 d Sports Night Edition」で、愛犬とともに軽井沢のゴルフリゾートへ。ゴルフバッグと愛犬用のペットカート、そしてキャリーケースを積み込んでの往復380kmの旅を通じて、Eクラスが「余裕の選択肢」である理由を実感した。

photos : Kunihisa Kobayashi
words : Koichi Yamaguchi

セダンの常識を覆す540リッターの荷室

休日の早朝5時、まだ人気のない東京の住宅街にグラファイトグレーの色味をまとった「E 220 d Sports Night Edition」が佇んでいる。ナイトパッケージの採用によってドアミラー、フロントリップ、サイドスカート、リアバンパーがブラックに統一され、20インチのAMGアルミホイールが端正なEクラスのプロポーションを精悍に引き立てている。

パートナーと自分の2つのゴルフバッグ、大きなペットカート、そして2人分のキャリーケース──今回のドライブ旅の相棒となる荷物をトランクに積んでみると、すべて収まった上にまだ余裕がある。もともとEクラスは十分な積載量を備えていると認識していたが、540リッターの広大な荷室の実力は想像以上といって過言ではない。Eクラスといえば、いつの時代も世界のプレミアムセダンのベンチマークとして存在しつづけているが、このような圧倒的な積載性能からも、その素性を実感する。

荷物を積み終えると、コットに収まった愛犬をリアシートに乗せ、シートベルトで固定する。2960mmのホイールベースがもたらす、広々とした後席スペースゆえだろう、愛犬もどことなく寛いでいる様子が、その隣に座る乗員にも伝わってくる。

安心して運転席に乗り込むと、外観とは一味違う空間がそこにある。上品なトンカブラウンの本革(ナッパレザー)が施されたシート、ダイヤモンドステッチが刻まれたその表皮、大きなガラス面がセンターから助手席まで広がるMBUXスーパースクリーンを中心に据えたダッシュボード──ブラックで精悍に仕上げられたエクステリアの内側に、ラグジュアリーと先進性が見事に共存した、上質な世界が広がる。シートに身を委ね、ナッパレザー巻きのスポーツステアリングを握ると、今日のドライブ旅への期待感が否が応でも高まる。

愛犬も安らぐディーゼルの走りと静寂

薄曇りの空の下、軽井沢を目指して走り出す。ストップ&ゴーが続く市街地で、パワートレインの上質なドライブフィールをすぐに実感する。2.0リッタークリーンディーゼル直列4気筒ターボエンジンとISGの組み合わせは、アクセルを踏み込めばディーゼルエンジン特有の低回転域からの豊かなトルクに電気アシストが重なり、スムーズに速度を高めていく。緻密な制御を行う「9G-TRONICオートマチックトランスミッション」は、ドライバーに変速のタイミングをほとんど意識させない。

外環自動車道から関越自動車道へ。しばらく高速クルーズを楽しんでから、ステアリングホイールに備わる、アクティブディスタンスアシスト・ディストロニックのスイッチをオンにした。前走車との車間距離を熟練ドライバーのように滑らかな加減速で制御しながら、アクティブステアリングアシストが車線をキープし続ける。ドライバーはステアリングに手を添えているだけでいい。丁寧にノイズ対策が施された静かな車内で、このままどこまでも走り続けられそうな気がしてくる。

ふと気づくと、リアシートからいびきが聞こえてくる。フレンチブルドッグらしい豪快なノイズを短い鼻から発しながら、コットの中で愛犬が眠り込んでいる。極上の乗り心地と静寂に包まれたこの空間は、愛犬にとっても居心地がいいのだろう。

愛犬のいびきをBGMにドライブするのもいいが、せっかくのオーディオシステムを使わない手はない。さっそく、MBUXのオンライン・ミュージックからSpotifyのプレイリストを選ぶ。17個のスピーカーと730Wの出力を誇るBurmester®4Dサラウンドサウンドシステムが、車内を豊かなサウンドで満たしていき、前席シートに内蔵されたエキサイターが音楽の振動を身体へと伝えてくる。そうして静かな車内が、極上のリスニングルームに変わる。
愛犬も安らぐディーゼルの走りと静寂

サイズを意識させない驚きの小回り

上信越道を碓氷軽井沢ICで下りると、様々な曲率のコーナーが続くワインディングロードへと至る。走行モードを「COMFORT」から「SPORT」に切り替えると、ステアリングに重みが加わり、サスペンションが引き締まって路面との接地感が高まる。アクセルの反応も鋭くなり、踏み込んだ分だけ即座にトルクが応えてくる。

コーナーに向けてステアリングを切り込むと、大きなセダンがドライバーのイメージしたラインをきれいにトレースしていく。高速道路ではアクティブステアリングアシストに任せてきたステアリングを、ここでは積極的に操りたくなる。Eクラスのドライバーズカーとしての資質が、顔を出す瞬間だ。

しかし、いつの間にか正しいルートを外れてしまい、センターラインのない細い山道に迷い込んだ。対向車とのすれ違いもままならない村道だ。全長5メートル、全幅1.9メートルに迫るボディを持て余しそうな場面だが、低速域で後輪を前輪と逆方向に最大4.5度ステアするリア・アクスルステアリングも相まって、大きなボディがひと回り小さなクルマのように向きを変える。歴代のEクラスが受け継いできた、ボディサイズを感じさせない取り回しの良さは、最新世代においてさらに磨き上げられていた。

対向車とのすれ違いの際も、360°カメラが車両の周囲を俯瞰映像として映し出し、自信をもって道路の左サイドギリギリまで寄せられた。誰でも気負わず扱えるということも、Eクラスが世代を重ねながら守り続けてきた価値のひとつだ。
サイズを意識させない驚きの小回り

休日を彩るNight Editionの“余裕”

オーソルヴェール軽井沢倶楽部に到着すると、相変わらず愛犬は深い夢の中だった。ドライバーにとっては、いつもの軽井沢への道のりより確実に短く感じる旅だったが、後席で深い眠りについていた愛犬にとっても、きっと同じことだろう。

クルマを降りて、ふと振り返る。スポーティでモダンなEクラスのエクステリアだが、英国の名門クラブを彷彿させるクラシックで重厚なクラブハウスのファサードデザインと馴染んでいるのが印象的だ。

浅間山を望む雄大な自然に抱かれたオーソルヴェール軽井沢倶楽部は、プロゴルファーでコース設計者としても知られるグラハム・マーシュが手がけた、全18ホールのコースだ。戦略性と美しさが融合した格式あるコースでありながら、愛犬をペット用キャリーバッグに入れることを条件に、ラウンドを共に回ることができる。

さっそく、愛犬を乗せたゴルフカートでフェアウェイをゆっくりと進む。標高1000メートルを超える高原の風の中で、愛犬は嬉々とした表情であたりを見回している。ドライバーもまた、疲労感とは無縁のままプレイを楽しむことができた。

充実したラウンドを終え、愛犬とともにEクラスへ戻る。ゴルフリゾートを後にし、新緑の軽井沢をゆったりと走りながら、今日という一日のことを考えていた。540リッターの荷室も、ゆとりある室内空間も、紛れもなくEクラスの魅力のひとつだ。しかし、このクルマは単にパッケージングに優れた実用車ではない。

都市の景観にも、軽井沢のような高級リゾートのそれに馴染む美しいデザインはオーナーの審美眼を刺激し、長距離ドライブも苦にならない走りの質が、その先で過ごす時間をより豊かにしてくれる。愛犬との旅を、ゴルフを、休日の充実度を、静かに押し上げてくれる。それがEクラスの「余裕」の本質であり、このクルマを選ぶことの意味なのである。

ABOUT CAR

E 220 d Sports Night Edition

2026年4月にラインアップされた新モデル。ドアミラーやフロントリップなどをブラックで統一した「ナイトパッケージ」の採用と、「AMGライン」の標準化により、一層精悍な佇まいを実現している。足元には迫力の20インチAMGアルミホイールを装備。内装はレザーARTICOシートを標準設定し、本革巻スポーツステアリング(ナッパレザー)で上質に仕立てられている。有償オプションのレザーエクスクルーシブパッケージを選択すると、シートも本革(ナッパレザー)に変更され、質の高いなめしたレザーにより、さらに快適なドライブを愉しむことができる。加えて、AIRMATICサスペンションやリア・アクスルステアリングも有償オプションで選択可能となっており、快適性と取り回し性能が向上。デザインと走りの“余裕”を象徴する特別な一台に仕上がっている。
E 220 d Sports Night Edition