機能的でありながら官能的な新しい高級車のスタイルを実現

メルセデスは将来へ向けたブランド戦略を毎年のようにアップデートしているが、電動化シフトは加速している。以前はBEVファーストだったが、2021年にはBEVオンリーへシフトすると宣言。30年までに“市場の状況が許せば”販売するモデルのすべてをBEVにする準備を進めていると表明した。BEVに対してはさまざまな意見があり、例えば日本では急速充電ネットワークの利便性の低さなどが指摘されるし、また、環境負荷軽減に対して政府等がいくら規制しても、ユーザーが欲しいと思わなければ広がっていきようがないという見立てもある。

しかしながらメルセデスがBEVの需要は急速に拡大していくだろうと確信しているのは、高級車であるメルセデスのユーザーが、エンジン車よりもBEVの方が性能的に優れていると認識し始めたからだという。なるほどこれは説得力がある。EQSのスタイリングは機能的に意味のあるものなのだ。

古くから高級車のエンジンに求められる性能は、低回転からトルクが太くて頼もしく、静かで振動がなくて快適、といったものだった。そのために排気量を大きくして低回転・大トルクを実現するとともに、多気筒化で振動を抑えた。その特性は、まさに電気モーターと一致する。高級車用エンジンはずっと電気モーターをベンチマークとしてきたと言っても過言ではないのだ。ならば、高級車はいち早くBEVにシフトするべきだろう。

わずか50m走っただけで圧巻のポテンシャルに驚愕

コクピットに収まると、未来感はさらに濃く感じられる。左右Aピラー間のダッシュボードがほぼディスプレイで埋め尽くされているのだから圧巻だ。MBUXハイパースクリーンと呼ばれるそれは、ドライバー前のコクピットディスプレイ(12・3インチ)、中央の有機ELメディアディスプレイ(17・7インチ)、助手席前の有機ELフロントディスプレイ(12・3インチ)の三つからなるが、一枚のガラスで覆われ、幅141㎝に広がる大きなスクリーンとなっている。メカニカルなスイッチは最小限とされていてシンプル&モダンだ。

日本導入モデルはいまのところリヤに永久磁石同期モーターを搭載するRWDのEQS 450+、前後に永久磁石同期モーターを搭載するAWDのメルセデスAMG EQS 53 4MATIC+の2種類で、MBUXハイパースクリーンは前者にオプション、後者に標準装備となるが、EQSならではの未来感、サプライズを堪能するにはマストアイテムだろう。

EQS わずか50m走っただけで圧巻のポテンシャルに驚愕

今回試乗がかなったのはEQS 450+。107・8kWhの大容量バッテリーを搭載し、WLTCモードの一充電走行距離は700㎞と日本で販売されるBEVで最長(22年9月時点)。もはや航続距離の短さで購入を諦めるということはなさそうだ。もちろんモードどおりの電費で走れるとは限らないが、実電費を辛めに見積もっても高速道路を400〜500㎞程度は走れるだろうから2〜3時間は走り続けられるはず。厚生労働省のバス運転者の労働基準をみても高速道路の連続運転時間は概ね2時間とされているとおり、2時間超で休憩をとることは安全を確保する目安であり、一般ドライバーでも同様だろう。サービスエリア等で休憩しつつ急速充電すればまた走り続けられることになる。

EQS わずか50m走っただけで圧巻のポテンシャルに驚愕

現在普及している急速充電器は出力50kW程度が多く、これだと30分で25kWh弱、距離はWLTCモードで約130㎞、辛めの実電費で100㎞程度が走行できる分になる。ちょっと物足りなく思えるが、2時間走った後にも電力が底をついているわけではなく、一日に500㎞も走ることは希だろう。また、普及しつつある出力90kWならば50kWの倍近くの電力が得られるわけで、普通の使い方ならば航続距離を心配することはないはずだ。

未来的な雰囲気に圧倒されるが、走らせる基本はこれまでのメルセデスと変わらない。プッシュボタンでシステムを立ち上げ、ブレーキペダルを踏み込んでコラム式シフトセレクターでDレンジを選択し、ブレーキリリースで走り始める。スタートしてものの50mぐらいで、こいつは凄い!と確信した。豊かなトルクで頼もしく加速していくが、ドンッと押される感じはなく、ジワジワとあくまでも品良く速度を高めていく。前後Gの変動がまったくなくてスムーズだ。しかもタイヤやドライブトレイン、サスペンションなど機械の可動部のフリクションがどこもかしこも超絶に低く、スーッとウルトラ滑らかに走っていく。

凄みすら感じさせる快適性はフラッグシップに相応しい

乗り心地は絶品だ。ただソフトタッチだとか、ダンピングが適正だとかいうだけではなく、路面に分厚いカーペットを敷き詰めたかと思うぐらいに特有のアタリの柔らかさ、上質感がある。スポーツモードに切り替えればハード方向に振られ俊敏性が高まるが、それでも並の高級車よりも快適。静粛性の高さも凄まじく、まるで外界と隔絶されているかのよう。すべての乗り味がハイレベルで、ここまでくると何やら浮遊感があって不思議な感覚になるぐらいだ。

アクセルを踏み込んで速度を高めていってもその感覚は続く。電気モーターはドライバーの意思に忠実でリニアな加速をみせるが、常にスムーズさを失わない。フル加速はRWDのため滑りやすい路面などでは制御が入るが、それでも245kW(333㎰)のパワーと、568Nmのトルクは十二分に強力で、2530㎏のボディを軽快に走らせる。

回生ブレーキの強度はステアリングについたパドルによって変化させられる。デフォルトのDは普通回生、左を一回引いたD-(マイナス)は強化回生、右を一回引いたD+は回生なしとなり、長引きしたD Autoはインテリジェント回生となる。パワーメーターを観察していると、Dでは回生ブレーキ全体の20〜30%程度でエンジンブレーキ相当、D-は70〜80%程度でワンペダルドライブにも匹敵する減速感、D+は回生なしのコースティングとなる。D Autoは前走車に近づくと自然に減速度が高まるが最大5m/s2となるうち回生は3m/s2が最大。つまり残りの2m/s2はメカニカルブレーキが介入することになる。

加速も減速もスムーズそのものだが、興味深いのはサウンドエクスペリエンスだ。サウンドはRoaring Pulse、Vivid Flux、Silver Wavesと3種類。音の感覚を文字で表現するのは難しいのだが、個人的にはVivid Fluxが宇宙船っぽくて気に入った。サウンドは音の強さや速度の高まりなどで音量、音質ともに変化。回生側もまた違ったサウンドとなる。これによって加減速の向きと強さなどが耳から入ってくる情報として体感できて、走りに一体感が生まれている。サウンドエクスペリエンスをオフにして、乗用車史上最強といえる圧倒的な静粛性の高さを享受するのもいいが、ドライビングを楽しむのならばオンがオススメ。うっかり速度を上げすぎてしまうなんてことも防げるから、安心・安全に繋がる。

EQS インプレッション

HMI(ヒューマン・マシン・インターフェース)も見事で、例えばアクティブディスタンスアシスト・ディストロニック使用時に、HUD(ヘッドアップディスプレイ)で前走車を捉えて追従している様をわかりやすく伝えてくるところなどに感銘を受けた。

その他にも多くの機能があって紹介しきれないほどだが、BEVだからこそ実現できた快適性の高さは凄みすら感じさせ、メルセデスの本気を見せつけられた。

136年前に自動車を発明したスリーポインテッドスターの、新たなCASEおよびBEV時代に向けての再発明。EQSはフラッグシップに相応しい次世代のラグジュアリーカーなのだ。

EQS インプレッション

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