カール・ベンツによる1886年の自動車特許取得から140年。メルセデス・ベンツはこの記念すべきマイルストーンを祝うべく、壮大なグローバルツアー「140 YEARS. 140 PLACES.」を展開している。3台の新型Sクラスが、6大陸を舞台に6万キロ以上を走破、その過程で50カ国以上に点在する、自動車史を形作ってきた世界140のスポットを巡るワールドツアーだ。ヨーロッパを皮切りに南米、アメリカ、韓国での熱狂を受け継ぎ、話題のフラッグシップセダンがいよいよ日本へ上陸。伝統的な美意識と最先端のカルチャーが交錯する日本の地で、新型Sクラスが描き出した軌跡を追う。

words : Go Kato

6大陸を巡る壮大なジャーニーの幕開け

自動車生誕の地であり、メルセデス・ベンツの魂が文字通り「息づく」場所で、物語はスタートを切った。2026年1月、ドイツ・シュトゥットガルトにあるメルセデス・ベンツ ミュージアムで新型Sクラスのワールドプレミアが盛大に執り行われ、この記念すべき瞬間と同時にキックオフされたのが、今回のグローバルツアー「140 YEARS. 140 PLACES.」である。
このツアーが最大の目的とするのは、単なる長距離走行記録の樹立やエンジニアリングの優位性の誇示ではない。メルセデス・ベンツが140年にわたり追求してきたテクノロジー、安全性、快適性、そして美しいデザインの進化を、世界中の自動車ファンと共有すること──。その根底には、信頼や安心、心地良さを象徴する、140周年のブランド哲学「Welcome Home」が深く息づいている。
シュトゥットガルトを出発した3台の新型Sクラスは、ヨーロッパの古道を抜け、南米の大自然や北米のハイウェイをこれまで駆け抜けてきた。各地でメルセデスと縁の深いロケーションを訪れ、新たな興奮の渦を巻き起こしながら、ツアーはいよいよアジアラウンドへと突入。韓国・ソウルでの熱烈なる歓迎を経て、去る4月下旬、次なるバトンが日本へと手渡されたのである。

日本の伝統と交差するモダンラグジュアリー

日本における新型Sクラスのロードトリップは、新緑の山々が織りなすコントラストが美しい福岡で幕を開けた。そこで訪れたのが、メルセデス・ベンツ福岡東。リニューアルを経て最新設備を備えたショールームで1日終日展示を行い、足を運んだメルセデス・ファンの目を楽しませた。
その後、旅路は本州へと進み、日本国内でも独自の文化圏を育んできた関西エリアへ。クルマは大阪の中心部へと滑り込んでいく。ネオンがまばゆい光を放つ道頓堀周辺のエネルギッシュな街並み。そんな大都市のカオスと喧騒の中に置かれても、Sクラスの存在感が揺らぐことはなかった。精緻なクラフトマンシップで仕立てられたキャビンに足を踏み入れれば、そこには完璧な静寂が広がる。車窓を通して視界に飛び込んでくるインパクトの強い風景が次から次へと移り変わろうとも、乗員を包み込む「Welcome Home」の心地良さは、いかなる環境下でも変わることはないのである。
日本の伝統と交差するモダンラグジュアリー

富士に響く熱狂とエンジニアリングの系譜 

都市の喧騒を離れ、新型Sクラスは日本の自動車文化を語る上で欠かせないモータースポーツの聖地、富士スピードウェイへと向かう。

F1の舞台としても知られ、今年開設60周年を迎えたこのサーキットは、雄大な富士山の麓に広がる。世界のサーキットの中でも極めて長い、全長約1.5キロメートルという屈指のストレートを備えていることでも知られる。一行が訪れたこの日、サーキットでは日本最高峰のレースであるSUPER GTが開催され、スタンドは興奮と熱気に包まれていた。
緊張感が張り詰める決勝直前のグリッドウォーク。そこには、参戦する「Mercedes-AMG GT3」が、大舞台を直後に控え、静かに牙を研いでいた。最高出力の異なるクラスの車両が混走するSUPER GTは、絶え間ないオーバーテイクが要求される過酷なレースとして知られている。
V8エンジンの爆音とアスファルトからの熱気とともに「Raw energy(生々しい熱量)」を剥き出しにし、勝利のため限界に挑むレーシングカーの熾烈な戦いがそこにはある。その過酷な環境で鍛え上げられた空力性能、高度な熱管理システム、そして、絶対的な安全性といった技術革新のベネフィットは、決してサーキットの枠内だけに留まるものではない。レースで培われた最先端のテクノロジーとR&Dの精神は、最高峰であるSクラスの開発へもさまざまな形でフィードバックされているのである。

サーキットを激しく駆け抜けるAMG GT3の情熱と、公道を優雅にクルーズするSクラスの気品。その両者は、「モータースポーツへの情熱」と「妥協なき安全性の追求」という、創業からメルセデスで受け継がれるDNAによって強固に結ばれているのである。

次なる140年へ:東京から世界へつなぐバトン

富士スピードウェイの熱狂をあとにし、Sクラスは日本独自のカスタマイズカーが集う大黒パーキングエリアへ。世界中のカーマニアから注目されるこの場所で、日本の奥深い自動車カルチャーの熱量を体感し、ツアーの一行はいよいよ東京の心臓部へと進路を取る。
日本における旅の終着点は、東京・表参道の「Mercedes-Benz STUDIO TOKYO(MBST)」だ。アジア初となった4月のオープン以来、MBSTはミュンヘンやコペンハーゲンなど世界主要都市に構える拠点と同様、クルマという枠を超え、さまざまなカルチャーや感性とメルセデス・ベンツが出合い、交わり、新たな体験を生み出す場所として、注目を集めている。
次なる140年へ:東京から世界へつなぐバトン
この表参道の空間にSクラスが滑り込んだとき、福岡から始まった日本ラウンドの旅はひとつのフィナーレを迎えた。

10日におよぶ日本でのドライブを振り返って、この「140 YEARS. 140 PLACES.」プロジェクトリーダーを務めるThilo Woitysakは、「(東京は)世界有数の大都市でありながら、ロンドンやニューヨークなどと比較しても、街の雰囲気や人の動きが驚くほど穏やかで、リラックスできる場所」との心象を得たという。また、道中に立ち寄った富士山麓周辺の大自然の美しさや、人々の礼儀正しさ、親しみやすさも強く記憶に刻まれていると語った。

しかし、壮大なジャーニーはまだまだ終わらない。日本でのミッションを無事終えたこのSクラスは東南アジアへと旅路を進め、世界各国の道と文化をつなぎながら、すべての始まりの地であるシュトゥットガルトを目指す。待望のグランドフィナーレは、10月に予定されている。

ABOUT CAR

The new S-Class

「世界で最も望まれるラグジュアリーセダン」として、走行性能、安全性、快適性のイノベーションを牽引し続けてきたフラッグシップモデル。140年にわたる伝統のクラフトマンシップと最先端のデジタルテクノロジーが見事な調和を奏でる。威風堂々としたプロポーションの内側には、極上のマテリアルで仕立てられた静謐なラウンジとも言える空間が広がり、乗る者すべてを優しく包み込む。比類なき乗員保護性能と極めて滑らかで静粛性の高い走りが、いかなる長距離ドライブも優雅な時間へと昇華させる。写真は「140 YEARS. 140 PLACES.」プロジェクト特別車。
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