侍ジャパンの主砲であり、2023年からボストン・レッドソックスでプレーしている吉田正尚選手。オフで帰国したタイミングで試乗した電気自動車EQE SUVから、何を感じたのだろうか?
photo: Kunihisa Kobayashi
styling: Akihiro Mizumoto
hair & make-up: Ryohei Katsuma
words: Shigekazu Ohno(lefthands)
メルセデスを熟知する吉田選手のEV初体験
侍ジャパンを二度の優勝に導き、2021年に東京で開催された国際大会でも金メダルを手にした栄光の打者、吉田正尚選手。オリックスからMLBボストン・レッドソックスに移籍後もファンの期待に応える八面六臂の活躍を見せ、初年度でいきなり球団新人記録となる年間50試合マルチ安打を達成した。
そんな吉田選手がオフの帰国時に立ち寄ったのが、六本木にあるMercedes me Tokyo。ふだん乗っているGクラスに近いサイズ──ということで気になっていた最新の電気自動車EQE SUVをチェックし、オンライン予約で気軽に試乗ができるプログラム「トライアルクルーズ」を試してみるためだ。
EQE SUVは、専用プラットフォームによって製造されるプレミアムオールラウンダーとしての電気自動車であり、先に発表されたEQS SUVと比較してひと回りコンパクトなサイズ感(全長4880×全幅2030×全高1670mm)となる。
とはいえホイールベースは3mを超え、安定した乗り心地もゆったりと過ごせる空間性もしっかりと担保されている。最高出力215kW(292PS)、最大トルク765Nm、航続可能距離は528km(※)という頼り甲斐のある走りのスペックも、ふと考えてみると、身長173cmながら“マッチョマン”のニックネームを持ち、スピードとパワーを活かした活躍を見せる吉田選手自身となんだかよく似ているではないか。
※ WLTCモードでの一充電走行距離の数値。使用環境(気象、渋滞等)や運転方法(急発進、エアコン使用等)、整備状況(タイヤの空気圧等)に応じて値は異なる。
「SUVが好きで、いまのGクラスを含めていろいろ乗ってきましたけど、電気自動車は今回が初めて。印象としては、まずデザインがモダンですね。これに家族を乗せて、地元の福井県で温泉にでも行ってみたい。あるいは高野山にお参りに行ったり、友だちを誘ってゴルフに行ったりもいいでしょうね。きっと、いろんなシチュエーションに合わせられるポテンシャルのあるクルマだと思います」
そう言いながら、興味深そうにあちこちを覗き込む吉田選手。試乗に出る前に初めての充電を体験してみたり、ドライバーズシートに座ってタッチパネルを操作してみたりと、興味津々な様子であれこれと質問を投げてくる。ピカピカの車体同様、その瞳も好奇心でキラキラ輝いている。偉大なメジャーリーガーも、ここでは新しいおもちゃを前にした少年のようだ。
積極的に走りを楽しむ、吉田選手流ドライビング
そしていよいよ待望の試乗へ。吉田選手はEQE SUVを駆って混雑気味の道を、泳ぐようにスイスイと走らせていく。それにしても、実際のサイズの割に持て余すような印象はない。なめらかなルーフラインと力強さを感じさせる引き締まったボディラインによって、スリークなフォルムにまとまっているからだろう。
ところで吉田選手の走りは、自称「空いている車線があれば、見逃さずに前に出たくなる性質。カーナビの予測到着時間より早く着くのに、喜びを感じてしまう」という“ちょっとせっかち”なスタイル。だがEQE SUVでのドライブは、安心感を持って楽しめたという。
「スッと音もなく加速してブレのない安定した走りと、ハンドルを切ったら切っただけ曲がる感じが良かった。大きめのボディサイズだけれど、プロダクトエキスパートさんに聞いたら、曲がる時に後ろタイヤも動くリア・アクスルステアリングという技術によって、驚くほど小回りが効くんですね。東京の狭い道でも快適に運転できました。野球で言うと、局面を見極めながら、チャンスがあればサッと塁を進めるような、そんなスマートな走者のような綺麗な走りでした。いい意味で、いま乗っているGクラスとも、選手としての自分とも違うキャラクターで、そこが面白かったですね」
一流選手ならではの、実に言い得て妙なインプレッションである。そして走りのスタイルが“のんびりと前へ倣えのクルージング”ではなく“状況に応じて積極的に走るのが好き”というのも、いかにもアスリート気質がにじみ出ているようで痛快ではないか。
「やっぱり何をしても、負けず嫌いの性格が出てしまうんですね(笑)。でも、このクルマは快適な乗り味も手伝ってゆったりした気持ちで運転できたし、かといってつまらないというのでは全然なくて、電気自動車ならではの加速の伸びがある走りを堪能できました。最先端の技術が投入されているという点でも興味深くて、例えば回生ブレーキの効きの強さを変えることで、フィーリングも変わるというのも面白い発見でしたね」
オフシーズンに思うこと、そして新たな決意とは
アメリカ生活を経験してからの今回の帰国に際しては、改めて四季のある日本の美しさに気づかされたと話す吉田選手。来シーズンに向けての準備をする合間に、時折は自らハンドルを握って、日本の美しい景色や豊かな食を発見する旅にも出てみたい、と話してくれた。
振り返ると2023年の吉田選手は、MLBでの活躍に加え、侍ジャパンのメンバーとしてWBCを戦い、大会記録を更新する13打点を獲得。日本代表を優勝に導くという輝かしい成果を残している。本人は、それをどう評価しているのだろうか?
「褒めていただけて嬉しいんですが、僕のなかではもう終わったことで、振り返っている暇はないというのが本音なんです。もちろん、小学生で野球を始めて、プロになって、夢だったMLBでプレーできたというのはすごく嬉しかったですよ。メジャーの開幕戦で、日本国歌ではなくてアメリカの国歌が流れた時は、ついにここに辿り着いたんだというような感慨深さもありました」
その開幕戦では、4番左翼でデビュー。2安打1打点の活躍で、ベースボール本場の度肝を抜いた。
「まあ、ホッとしました(笑)。でも1本目がなければスタートしませんからね。ただその瞬間、次の1本をすぐに意識しました。全てはその積み重ねなので。決心したのは、とにかく毎日、自分のベストを尽くしていこうということ。自分にできることは(毎試合に向けた)準備しかない。前日にたまたま猛練習したからといって打てるものでは当然ありません。もっといい景色を見るために、その毎日の積み重ねを続けるしかないんだという想いです」
感傷に浸る間もなく、日々精進を重ねる吉田選手。だが、そこで感じるプレッシャーも少なくないはずだ。
「もちろん、体も心も常に100%の状態であるというのは無理な話だから、自分はメリハリをつけることを心がけています。やる時は死ぬ気でやる! そのためにも、やらない時は心のスイッチをさっさとOFFにするんです。ダメな日はダメとしてくよくよせず、明日どうするかを前向きに考え、必要な準備をする。それを繰り返すだけですかね」
飾らない言葉ににじむ、迷いのないまっすぐな心。簡単なように聞こえても、なかなか誰にでもできる話ではないかもしれない。しかも、舞台は日本ではなくMLBである。その違いを、どう感じてきたのだろうか?
「日本の野球とアメリカのベースボールは、やっぱり似て非なるものなんです。ルールも違えばプレースタイルも違う。こちらはやっぱり、選手一人ひとりのパワーとかスピードとかの身体能力が高くて、驚かされるところがあります。でも、WBCでも、日本は緻密な戦略や団結力で結果的に勝ってきたじゃないですか。自分は日米の両方でプレーできている経験を活かして、それを強みに変えていければなと思っています」
今年30歳になった吉田選手は、肉体的にも精神的にもまさに円熟期と呼ぶにふさわしいだろう。これからさらにどんな進化を遂げていくのか、今後の課題と来シーズンにかける想いを聞いてみた。
「なんとか無事にMLBでの最初の1年をクリアできたので、次の1年をイメージしやすくなったという気持ちのうえでのラクさはありますね。とはいえ、年間140試合を戦うというのはやっぱりしんどかったので、今年の経験を活かして、より体調管理を万全にしていきたい。アメリカはとにかく広くて、移動時間が長くて、同じ国でも時差が3時間もあるから、頑張る以前にコンディションをキープすることが大変だったんです。
幸い妻が管理栄養士でもあるので、食事の面も含めてとても助けられています。家族の時間も大切にしながら、来年は自分ももっと活躍しつつ、チームとしては上位を狙えるようにしたいですね。そのためにも、やっぱりホームランを打つという原点にこだわりたい。自分はずっとホームランを打つために練習を頑張ってきたので、来年は1本でも多く打ってやると。ただそれだけです」
鋭い眼光で、そう語ってくれた吉田選手。最後に、プロベースボールの道を目指す若き世代へのメッセージをお願いすると次のような心に響く言葉が返ってきた。
「野球が好きだからこそ向上心を持ってやれる。辛くても自分のためになるという気持ちがいつもあり、小さい時からそのベースは変わりません。練習の後にバッティングセンターに行ったりと。でもそれはやらされているのではなく、自分の意志でやっていました。『自分がこうなりたい』『あれをできるようになりたい』という想いがあったからこそです。
子どもたちにも、『自分が興味あることを頑張る』『目の前のことに自分の意志で臨んでいく』ということを大切にして欲しいですね。その中で(野球以外の)別の選択肢に行くというのもあるかもしれませんが、それまでの努力が無駄になるということはない。中途半端で次に行くのと、やり切って次に行くのでは全然違う。野球だけに限らず、その努力は絶対に無駄にならないと思います」
まずは、吉田選手が日本でのオフの間、自身にもたまには“回生ブレーキ”を効かせながら、たっぷりとフル充電してくれることを願って止まない。新たなシーズンでも、あの豪快なホームランで、また我々に感動を与えてくれるために――。
プロフィール
吉田正尚/Masataka Yoshida
【着用アイテム】※全て税込価格
ブルゾン¥876,700、ニット¥174,900、パンツ¥127,600、スニーカー、サングラス参考商品/全てラルフ ローレン パープル レーベル(ラルフ ローレンTEL:0120-3274-20)、その他本人私物
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ABOUT CAR
EQE SUV
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※ 車両の仕様・装備は、撮影時点の仕様であり、日本仕様と異なる場合があります。