EV黎明期から「EQC」に乗り続けるクリエイティブディレクターの川上シュンさん。川上さんにとって最良の選択というEVライフ、そしてフラッグシップモデルである「EQS 450+」を試乗したインプレッションを訊いた。

photos: Maruo Kono
words: Kazuhiro Nanyo

※ 試乗車は【MP202301】EQS 450+です。
※ MPとはメルセデス・ベンツ日本にて使用しているモデル識別コードになります。

サステナブルな感性をもつこと

ラグジュアリーブランド、ホテルなどのコンセプト立案やブランディングなど、幅広い分野においてアートディレクターとして活躍する川上シュンさん。これまで10年近くにわたってメルセデス・ベンツに乗り続ける愛好家であり、EQCのデビューの時にはいち早くEVへと移行。以来、EQCと過ごしてきた年月もすでに5年が経過しているという。

「当時、可能な限り環境配慮型へシフトしたいという要望が世の中的に高まっていたことは、仕事を通して感じていました。でも自分の提案やデザインといったアウトプットよりもまず、僕自身が持続可能な考え方に沿うライフスタイルを選ぶ、つまり例えばEVに自分が乗ることで、環境配慮型の暮らしを体感したかった、というのが一番の理由です」

東京と軽井沢の2拠点生活を送り、地方への打ち合わせや撮影の機会も少なくない。毎月、相当距離を走る川上さんが選んだのは、当時、日本に導入された直後の前期型EQCだった。 

「EQCに惹かれた理由は、軽井沢のような自然豊かな場所で気持ちよく乗れること。そもそもスピードを出したいタイプでも、コアなアウトドア派でもないですが、クルマはよく乗りますし、山にも行きます。また、音楽を聴きながら書斎の延長として移動したいので、僕自身の“アトリエ空間”として位置付け、居住性を重視して選びました」

クルマがただ目的地に着きさえすればいい、そうした単なる移動ツールではないこと。移動する時間が、仕事のアイデアを練ったり、オフタイムとして寛いだりする大切な時間だからこそ、静粛性が高く、室内空間も広々として快適なEVはリアルな選択肢だったという。

「東京~軽井沢間のドライブで過ごす2時間余りもそうですが、クルマに乗っている前後も含めて明らかにQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が上がりましたね。だからEVの世界観、心地よさを知るともう戻れなくて、次の選択肢もEVしかないと考えています」

そんな川上さんが今回、東京の路上で試乗したのは新しくラインアップに加わったSクラスの電気自動車「EQS 450+」。長年のEV乗りとして、そして気鋭のクリエイティブディレクターとして、メルセデスのサルーン vs SUVの違いはどう映るのだろうか?

快適性とデザインが見事に融合

まずカタログ上の航続距離が700㎞*と聞いて、川上さんは驚いた表情でこう述べる。

「自分のクルマでは(バッテリー残量)30%ぐらいになったら休憩がてら充電場所を探す習慣が身についていますが、東京~軽井沢間の150㎞なら余裕で往復できそうですね」

* WLTCモードの一充電走行距離でのEQS 450+【MP202301】【MP202302】の数値で、定められた試験条件のもとでの値のため、お客様の使用環境(気象・渋滞等)や運転方法(急発進・エアコン使用等)に応じて一充電走行距離は大きく異なります。

最新モデルということで、バッテリー容量やマネージメント制御に反映されている、ここ数年の技術的進化に大いに感心する一方、空力に優れたエクステリアやリュクスなインテリアについて川上さんは次のように評する。

「ソーダライトブルーの外装色もベージュを採り入れた内装も、とてもヨーロッパ的で大人なセンスにあふれています。内外装とも、ふと手で触りたくなるほど滑らかですよね。メルセデスが掲げる“センシュアル・ピュリティ”(官能的純粋)というキーワードの通り、官能性に訴える部分、言葉にならないところに重きをおいてデザインされているところに、とても共感します」

車内に身体を滑り込ませ、ステアリングの感触やタッチスクリーン画面をひとしきり目で追っては触れて確かめつつ、川上さんはこう続ける。

「僕のクルマは、センタースクリーンがメーターパネルから連なるようにダッシュボード上に据えられています。対してこのEQSはセンターコンソールのアームレストからタッチスクリーンが一体化していて、手元に近くてより動作が小さくて済む。優雅に走らせるクルマとしては、このインターフェイスの方が見た目にも触感の上でも、しっくりきますね」

目に触れる素材のマットな質感、ウッド張りでありながら決定的にモダンなダッシュボード──。ここにハイエンドサルーンゆえの配慮が感じられるという。

「サルーンらしく、切り始めの操舵感から乗員の包み込み方、乗り心地まですべてが優しい。もっとしっかり目のEQCと比較して、ソファで寛ぐようにリラックスできる感覚はEQSの方が断然強いです」

まるでスパにいるかのような車内体験

さらにEQSのセンタースクリーンから「エナジャイジングコンフォート」を呼び出してみた。これは音響や映像、クライメートコントロールやシートに備わるホットストーン機能などを統合的にコントロールして、ドライバーや助手席の乗員にリラックス、リフレッシュ、エンパワーメントといった体感メニューを提供する装備だ。簡易とはいえ車内に身を置いたまま、あたかもスパにいるかのような体験ができる。川上さんは慣れた手つきで、「フォレスト」「波の音」など豊富なリストを指でスクロールしながら、それぞれの効用をトライし始めた。

「アンビエントライトは未来感があるディティールなので、自分のEQCでも気に入って使っています。基本はオレンジ系、夜は青くといった具合に変化させています。EQSでは発光部がさらに拡がって、エナジャイジングコンフォートのプログラムに合わせて変化するんですね」

「先ほど少し話した通り、普段は2~3時間走ったら充電のタイミングと捉えて、充電中は車内で音楽を聴いたり、アイデアスケッチをタブレットでまとめたり、PCを出してオンライン会議をしたりしています。でも、その時間をエナジャイジングコンフォートでのリフレッシュやリラックスに充てるのもいいですね。『あと1時間、頑張って走るか』という時には、バイタリティ系でコンディションを整えてもいいですね」

イオナイザーやHEPAフィルターが効いているからこそ、プログラムに合わせたアロマや、シート背面から刺激するホットストーン効果も際立つ。音と映像といった視聴覚だけでなく触覚や嗅覚まで、五感に訴えかけるアプローチが「唯一無二」というのだ。

QOLの絶対的な指標となるEV

「じつは自分がEQCを購入する時、妻を説得するために強調したのは、移動中のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)が絶対的に深まるという点です。移動手段として一定以上の時間を車内で過ごすので、移動の道具としてよりも必要不可欠な居住空間として(EQC購入の理由を)プレゼンしました(笑)」

「EV全般の共通項は、ドライビング体験としてノイズが圧倒的に少なく、喩えればノイズキャンセリングのヘッドホンを着けている感じでしょうか。車内でストリーミングで聴く音楽も、ぼくは“チル・ミックス”が多いのですが、チルっぽい曲はノイズが多いとしっかり聴こえてこないタイプの音楽が多いので、その意味でもEVであることは僕のライフスタイルに欠かせない恩恵をもたらしてくれています」

しかし、車内空間における感覚的な透明度の高さが、移動中の時間の濃密さに結びつくのは、何も静粛性に限った話ではない。

「嗅覚に対するアプローチ、つまり車内の空気の質もいいですね。そこに加えて、静寂で滑らかに走るEQSで過ごす時間を端的に表現すれば、あたかもラグジュアリーホテルに滞在しているかのような感覚です。EQS独特のホスピタリティが全体のデザインとして確立され、貫かれています」

「今、QOLに敏感なホテルやラグジュアリーの業界では、物質的な満足より感覚的なもの、知覚を通して体感できるものに価値を置くようになっているんです。マインドフルネスや質の高い時間を過ごせることに“ラグジュアリー”の定義がシフトしていて、EQSもそうしたコンセプトのもと相当に造り込まれたことが察せられますね。肌触りをとても大事にして、乗っている人のウェルビーイングに重きを置いている感じがします」

それはコストパフォーマンスの重視とはまったく相容れないものだとも、川上さんは強調する。

「自分の時間の質を高め、クリエイティブをする生活に沿ってくれる“移動アトリエ”だからこそ、僕はEQCに乗り続けていますが、乗り手のライフスタイルや感性に寄り添う点、移動する“感性の場”である点はEQSも一緒。よりリラックスしたくなってしまって仕事するのが難しくなりそうですけど(笑)」

環境により配慮するトレンドの中でも、ニューラグジュアリーを積極的にとり込みながら新しい価値観をきちんと表現し切る──。川上さんは「やはりこれこそがメルセデスの大きな強みだと思います」と最後に語ってくれた。

ABOUT CAR

EQS 450+

広々とした車内空間、優れた空力性能をはじめとする高度な機能性など、新時代のラグジュアリーを体現した「EQS 450+」。107.8kWhの新世代大容量リチウムイオンバッテリーを搭載し、700kmの一充電走行距離を実現する。
EQS 450+

※ 車両の仕様・装備は、撮影時点の仕様であり、日本仕様と異なる場合があります。