世界の8000メートル峰14座すべての登頂を成し遂げた写真家の石川直樹さん。2024年10月に最後の山であるシシャパンマの頂に立った彼が、メルセデス・ベンツのプレミアムミドルサイズSUV「GLC Core」とともに長崎県の離島・対馬を巡る旅に出た。日本と韓国の狭間に位置する“国境の島”の姿を、フィルムカメラに収めるために──。

photos : Naoki Ishikawa
words: Koichi Yamaguchi

フィルムカメラで世界の高みを写真に収める

石川直樹さんは、世界各地の辺境から都市まであらゆる場所を撮影し続けてきた写真家である。2024年10月、チベットにあるシシャパンマ(8027m)に登頂し、世界の8000メートル峰14座すべての登頂を達成。2001年のエベレスト初登頂から続けてきたヒマラヤの高峰への挑戦に一つの区切りをつけた。その石川さんは、高所での厳しい環境においても、常に独自の視点で写真記録を残してきたことでも知られている。

「デスゾーン」と呼ばれる標高8000メートルを超えるエリアでは、生命を左右するほどの大きな負担を強いられる。荷物は極限まで減らすことが絶対条件のサミットプッシュだが、石川さんは必ず中判カメラ1台とフィルム数本をザックに詰め込んでピークを目指す。ともすれば命取りにもなりかねない“こだわり”の理由を聞くと、次のような答えが返ってきた。

「もう大変は大変ですが、こんなこと(8000メートル級の頂上からフィルムカメラで撮影する)をやってるのは自分しかいない。だからこそ『目の前の光景をしっかり記録したい』という気持ちで撮影しています。カメラを(ザックから)出すことさえ億劫になりますが、それでもやはり撮りたいん……というか、忘れたくない、いま見ている情景をフィルムに刻みたい、という思いがいつも勝るんです」

頂上まで携行できるフィルムの本数には限りがある。つまりシャッターを切る一枚一枚が身を切るような真剣勝負となるのである。身体的負担に加えて、必ずしも気象条件が味方してくれるとは限らないが、失敗が許されるマージンは文字通り“ゼロ”に近いといっても過言ではない。

独自の文化圏を形成した対馬

“世界の天井”ともいえる8000メートル峰14座制覇の偉業から「登山家」のイメージを強くもつ読者も少なくないかもしれないが、石川さん自身は、人類学、民俗学に強い関心を抱き、辺境に位置する土地の数々から、現代を象徴する都市部にいたるまで、自身が目にし、出会い、体感してきた文化、人、風景を作品として発表し続けてきた。

そんな石川さんが今回向かったのは長崎県の対馬。“国境の島”として知られるこの地は、石川さんが長年取り組んできた「海から見た日本列島」というテーマの重要な一部であった。

「北海道とサハリンや北方四島との境界、沖縄南部から台湾へと続く海域、そして対馬と朝鮮半島の間──。ぼくは常にこうした境界領域に強い関心を持ち続けてきました。こうした“端っこ”には、歴史的·文化的な土地の背景が深く刻まれて、滲み出していることが多いからです」

対馬訪問の直接のきっかけは、2025年10月に奈良県立万葉文化館で開催する展覧会に向けた撮影のためだった。展覧会では、遣新羅使の航路を辿って、奈良・大阪から朝鮮半島へと続く航路を追っていく。対馬はその旅路の最後に位置していた。

石川さんによれば、遣新羅使とは遣唐使や遣隋使と同様に重要でありながらあまり知られていない、日本から朝鮮半島の古代国家「新羅」(紀元前57年〜935年、現在の韓国南東部に位置した)に派遣された外交使節団だ。6世紀頃、奈良・大阪からから瀬戸内海、北九州を経て朝鮮半島の新羅へと至る海路は、日本と外国を結ぶ初期の国際交流路だった。

石川さんは、この航路上で詠まれた万葉集の歌の舞台である「万葉故地」を丹念に撮影してきた。これまで対馬の南にある壱岐までは撮影してきたが、対馬だけはまだ足を踏み入れたことのない場所として残されていたのだ。

「国境の島という呼称通り、古代から現代まで、対馬は朝鮮半島の文化と日本の文化が複雑に入り混じっています。かつて“対馬国”として独立性の高い地域だったこともあって、両文化が融合した独自の文化圏を形成しています」

白の風景に溶け込むGLC Core

対馬は沖縄本島と北方四島を除けば、日本で3番目に大きい有人島であり、南北82km、東西18kmにわたって広がる。全島の約9割が山林に覆われ、海岸線は日本有数のリアス式海岸が続く。日本と韓国の間に位置するこの島は、福岡から対馬までは約132kmあって、船で約5時間を要するのに対し、対馬から韓国の釜山までは約50km、1時間半ほどの船旅で到着する。地理的には韓国のほうがはるかに近くに位置するのだ。この地理的特性が、対馬の文化形成に大きな影響を与えている。

今回、石川さんの旅の供を務めたのは「GLC Core」。ISG(インテグレーテッドスタータージェネレーター)による電気モーターが提供するスムーズな走り、高速巡航時の高燃費ドライブはもちろんのこと、安全性・居住性もエントリーモデルとは思えない高レベルで融合した1台だ。

モデル名の「Core(核)」に表現されているとおり、高い走行性能・安全性能のみならず、官能的ともいえる伸びやかなプロポーション、力強さと躍動感を余すことなく表現したデザインディテール、そして上質かつラグジュアリーなマテリアルを随所に採用した車内空間など、ハイグレードSUVを構成する“核心部”をすべて継承している。

これから訪れる本格的な夏シーズンへ向けて、家族や友人と外遊びを満喫するのにベストな“相棒”であり、巡航燃費に優れるクリーンディーゼルエンジンとメルセデス伝統の四輪駆動システム「4MATIC」で走りを満喫するツーリングはもちろんのこと、大容量のラゲッジスペースを生かして、山登り、バーベキュー、キャンプなどGLC Coreが活躍するシナリオは無数に存在する。

そんなGLC Coreとともに石川さんは、福岡からカーフェリーで対馬へと渡り、続いて北部の比田勝港から島の南へ向かってドライブ。さらに韓国・釜山に船で渡って、遣新羅使が降り立った彼の地の姿をフィルムカメラで収めると、再び対馬に戻り島の隅々を撮影した。

石川さんが対馬で特に印象的だったと語るのが、島に遍在する「白」の存在だ。

「本土に比べると自然環境も独特で、特に白嶽という山は印象的でした。白い石英の露出した岩肌、白い花々、白壁の家々など、島全体から白い色調が浮かび上がっている印象を受けました。偶然にも今回乗ったGLC Coreもボディカラーが白色で、島の景観とも相まって、落ち着きました」

白嶽は南部に位置する美しい山で、頂上からは遠く海岸線まで見渡せる絶景スポットでもある。石川さんはGLC Coreをで登山口まで向かい、鎖場もある険しいトレッキングルートを登って、その壮麗な景観を撮影した。

「他の日本の山々ではあまり見られない、頂上付近の大きな岩の景観が特徴的です。山頂に立つとすぐ前に岩峰がそびえ、その向こうに浅茅湾(あそうわん)というリアス式の湾が広がっています。山頂から岩峰と海が共に一望できる景観はあまり出会ったことがありません。浅茅湾は万葉の歌にも詠まれた場所ですが、どこから眺めるよりも、この白嶽からの風景が一番良かったです。登った甲斐がありました」

そんな道では、GLC Coreのサイズ感も絶妙だったという。

「大き過ぎず小さ過ぎず、車内に十分な荷物スペースがありながら狭い道路でも通行できる、理想的なサイズでした。デザイン面でも洗練されていて、どの角度から見ても美しいフォルムですね。パノラマルーフは、撮影地への移動中でも開放感を味わえて快適でした」

文化の交差点を巡る

石川さんが対馬の旅でベースとしたのは、対馬南部の厳原町(いづはらまち)にある「hotel jin」。155年前に建てられた「有明荘」という旅館を、建築家の長坂常さん率いるスキーマ建築計画がリノベーションした宿だ。長坂さんは既存建築の価値を活かした独創的なリノベーションで知られている。

石川さんは、ここを拠点に島内の撮影を行った。

「自分なりの直感と下調べで、島内の重要地点をリストアップして、jinを起点に島の南部と北部、両方の見どころをがっつり訪れました」

対馬には独特の文化遺産が多く残されている。信仰に関する遺構もその一つだ。

「太陽信仰の名残があって、『おひでり様』と呼ばれる太陽を崇拝する古来の信仰が残されています。特に印象的だったのが『五根緒』(ごねお)と呼ばれる場所。ここでは古くから神々を迎える祭祀が行われ、4つの積石塔が建てられています。こうした祭祀場などを巡る中で、対馬独自の信仰の形を強く感じました」

島に残る歴史的な遺跡も見どころだ。667年、浅茅湾南岸に突き出した城山に築かれた金田城は、大陸からの侵攻に備える国防の最前線であり、当時の対馬が軍事的緊張漂う国境の島だったことを物語る。皮肉にも、建設から1000年以上が経過した明治時代に入り、今度は日露関係の緊張を背景に、この古代の山城は近代的な要塞として再整備された。

「金田城の跡には立派な石垣が残されており、対馬が長い歴史において国境の島として担ってきた役割が伝わってきます」

フィルムに収める国境の記憶

対馬という貴重な被写体を前に、石川さんは、自身のライフワークである、旅をしてその情景をフィルムに焼き付けることにこだわった。

「対馬の撮影も、ヒマラヤ登山と同様、フィルムカメラを使いました。体験は時間とともに記憶から薄れていきます。ぼくにとって写真は、自分が目にしたものを記録するための手段でもあります。ウェブに掲載されている写真はデジタルですが、奈良の展覧会で見せる写真は、いつものようにフィルムから印画紙に焼いたものを展示します」

ABOUT CAR

GLC 220 d 4MATIC Core (ISG)

スタイリッシュなデザイン、使い勝手の良いボディサイズ、高い安全性が評価され、メルセデス・ベンツのベストセラーSUVとなったGLC シリーズに加わる新たなエントリーモデル。標準装備·オプションパッケージを刷新している。 
GLC 220 d 4MATIC Core (ISG)

PROFILE

石川直樹 / Naoki Ishikawa

1977年東京都生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程修了。人類学、民俗学などの領域に関心を持ち、辺境から都市まであらゆる場所を旅しながら、作品を発表し続けている。2008年『NEW DIMENSION』(赤々舎)、『POLAR』(リトルモア)により日本写真協会賞新人賞、講談社出版文化賞。2011年『CORONA』(青土社)により土門拳賞。2020年『EVEREST』(CCCメディアハウス)、『まれびと』(小学館)により日本写真協会賞作家賞。2023年 東川賞特別作家賞。2024年紺綬褒章を受賞した。著書に、開高健ノンフィクション賞を受賞した『最後の冒険家』(集英社)、『地上に星座をつくる』(新潮社)ほか多数。石川直樹写真展『ASCENT OF 14 2001-2024 〜8,000メートル峰14座への旅〜』がFUJIFILE SQUAREにて8月29日(金)〜9月18日(木)まで開催。10月には奈良県立万葉文化館での個展も予定されている。

※ 車両の仕様・装備は、撮影時点の仕様であり、日本仕様と異なる場合があります。