7月末のハンガリーGPで前半戦の区切りを迎えた2026年F1シーズン。破竹の勢いで数々の記録を塗り替え、ドライバーズランキング首位を走るのが、Mercedes-AMG PETRONAS F1のキミ・アントネッリだ。F1参戦2シーズン目にして世界を魅了する若きスターをメルセデス・ベンツ日本が独占インタビュー。前半戦の驚異的な活躍の振り返りを通じて、勝利を追い求める信念  、日本ファンへの想い、お気に入りのメルセデスモデル、そして未来を見据えたそのビジョンを訊く。

words : Shogo Hagiwara

19歳のアントネッリが立つ現在地

モータースポーツの最高峰を誇るF1の舞台で、新たなヒーローがその姿を現した。2026年シーズン、Mercedes-AMG PETRONAS F1のステアリングを握り、世界中のファンを熱狂させている19歳の新星、キミ・アントネッリだ。

イタリア出身のアントネッリは、7歳でカートを始めて以来、数々のレースで優勝。その類まれなる才能から、12歳だった2019年にはすでにメルセデスのジュニア・プログラムに加入している。F1は今季がまだ2シーズン目ながら、開幕からの勢いはまさに圧巻のひと言に尽きる。
第2戦の中国GPで史上最年少となるポール・トゥ・ウィンを飾ると、「伝説の鈴鹿」で行われた日本GPや、マイアミGPでも見事に表彰台の頂点を奪取。難コースで知られる第5戦カナダGPでは、F1史上初となるキャリア初勝利からの4連勝を達成し、続くモナコGPまで破竹の5連勝を記録した。さらには、スパ・フランコルシャンを走るベルギーGPもポール・トゥ・ウィンで制し、ライバル勢に大幅なポイントリードをつけて夏のブレイクを迎えた。

鈴鹿で史上最年少記録を樹立

世界中のファンを魅了してやまない若き才能の「強さ」の理由はどこにあるのか。その答えは、圧倒的なスピードに加え、結果に至るまでの「プロセス」を徹底して追求する強靭なメンタリティと言えるだろう。その才能が完璧な形で実を結んだのが、前半戦のハイライトのひとつである鈴鹿サーキットでの勝利だ。

レース展開に合わせた冷静なタイヤ戦略と、チャンスを逃さない高い適応力を見せたアントネッリは、後半を通じて後続ドライバーを寄せ付けない走りをみせ、ポール・トゥ・ウィンでレースを制し、F1史上最年少でのドライバーズランキング首位へと躍り出たのである。
「鈴鹿はF1開催地の中でも最高のサーキットのひとつです。そして、大挙するファンの存在がこの伝説的サーキットをさらに特別な場所へと押し上げてくれています。日本のファンの熱量とモータースポーツへの深い敬意には本当に感動しました。結果だけでなく、その裏にある努力やプロセスの細部まで理解して応援してくれるんです。過去の偉大なドライバーたちが勝利を刻んできた鈴鹿の表彰台の頂点に立てたことは、僕にとって夢のような瞬間でした」
鈴鹿で史上最年少記録を樹立

結果を生む揺るぎないマインド

この鈴鹿での勝利が象徴するように、アントネッリの驚異的な速さと安定感を根底で支えているのは、これまでのキャリアを通じて培ってきた、極めてストイックなプロとしての姿勢だ。 世界最高峰のプレッシャーがかかる環境にあっても浮き足立つことなく、その両足は確実に地面を捉えている。

「僕はずっと、結果だけでなく、そこに至るプロセスにフォーカスしてきました」と語るアントネッリ。「カート時代に始まって現在に至るまで、毎日改善を重ね、周囲の人々から学び、一貫してやるべきタスクに取り組むことが僕にとってのすべてです。F1の世界にステップアップしてからも、その根本的な信念は変わっていません」
しかし、一瞬の判断が勝敗を分けるF1の世界では、求められる準備と技術の精度が格段に跳ね上がる。

「すべての要求がより厳しくなり、ディテールへのさらなる徹底の重要性を強く実感しています。このレベルでの進化は、小さな成果の積み重ねから生まれるものです。だからこそ、より規律正しく、忍耐強くなることが不可欠だと思います」

チームとの絆と素顔の魅力

このストイックな姿勢を支えているのが、Mercedes-AMG PETRONAS F1という環境だ。 メルセデスで走ることが「大きな責任であると同時に、素晴らしいチャンスであり、誇り」と語るアントネッリは、チームが積み重ねてきた歴史と妥協なき哲学を常に胸に刻み込んでいるという。

「ジョージ(・ラッセル)やトト(・ヴォルフ)とは、とてもオープンで誠実な関係を築けていると思います。ジョージは、豊富な経験を持つ素晴らしいドライバーですし、トトは、チームの目指すべき方向と期待を常に明確に示してくれます。チーム全員が同じ目標に向かい、同じマインドセットで突き進むこと──これこそが、チームを前進させる力になっているのです」
そう語る一方で、過酷なレースを離れたプライベートでの素顔についても、その一端を明かしてくれた。

「家族や友人と過ごす時間こそが、一番自分らしくいられる瞬間です。リラックスしたいときも、レーシングシミュレーターに乗ったり、父のレースチームの手伝いをしたり、週末のモータースポーツ観戦を楽しんだりしています」

F1の頂点をひた走るアントネッリは今年5月、モータースポーツ界で際立った功績と将来性を有する者に贈られる「ロレンツォ・バンディーニ賞」も受賞している。名誉あるこの賞の授賞式では、「Mercedes-AMG GT3」のステアリングを自ら握り、イタリア・イモラの歴史的な市街地から熱狂的なファンが見守る中をパレードランするという特別な祝福を受けた。いまや名実ともに新世代のヒーローとしての地位を確固たるものにしたと言っても過言ではないだろう。
そんなアントネッリに最もお気に入りのモデルを尋ねると、「Mercedes-AMG GT」との答えが返ってきた。 

「圧倒的なパフォーマンスと、ドライバーにダイレクトに伝わる純粋なドライビング感覚が見事に融合していて、乗るたびに心を揺さぶられます。僕にとって運転の楽しさとは『クルマとの一体感』です。クルマから明確なフィードバックがあり、自分が完全にコントロールできていると感じられるとき、運転はただの移動手段を超えた特別な体験になるのです。パフォーマンス、快適性、そして精密さを高いレベルで融合させること——それこそがメルセデス・ベンツの素晴らしさだと思います」

タイトルの先に見据える未来

ポイントリードを維持し、ワールドチャンピオンの座に最も近い位置に立ちながらも、アントネッリの視線は目先のリザルトを超えた地平を見据えている。自身の将来のキャリアに関して、「どのような影響を与えられるドライバーになりたいか」と問うと、アントネッリは、プロとしての揺るぎない決意を明かした。
「もちろん、結果やタイトルは僕たちが目指して戦っているものなので重要です。でもそれ以上に、時間が経っても『チームの進化と成功に貢献し続けた存在』として記憶されたいと思っています」

若くしてスターダムに駆け上がりながらも、アントネッリが目指すのは一時の輝きではなく、世代を超えてチーム全体に確固たる強さをもたらすことなのだ。

「一貫性を保って、プロとして成長し、チームの中に強い基盤を築く手助けをすること——メルセデスを前に推し進め、このブランドを正しい形で表現する役割を果たせるなら、それ以上に誇らしいことはありません」
タイトルの先に見据える未来
妥協なき情熱で進化を続けるキミ・アントネッリ。メルセデス・ベンツが掲げる「最善か、無か(The Best or Nothing)」という理念をまさに体現する彼が、Mercedes-AMG PETRONAS F1と共にこの先どんな偉業を成し遂げていくのか。

夏のブレイク明けとなるオランダGPを皮切りに、いよいよ後半戦の幕が上がる。大歓声に包まれること間違いなしの母国・イタリアGP、極限の集中力が試される市街地サーキットのシンガポールGPなど、タイトル争いの鍵を握る試金石のラウンドを経て、最終戦アブダビGPへと続く。チャンピオンシップの頂点を見据え、限界へと挑み続けるアントネッリの走りに、世界中から熱い視線が注がれている。

PROFILE

アンドレア・キミ・アントネッリ/Andrea Kimi Antonelli

2006年イタリア生まれ、19歳。Mercedes-AMG PETRONAS F1所属のレーシングドライバー。7歳でカートを始め、12歳だった2019年にメルセデスのジュニア・プログラムへ加入。異例のスピードでステップアップを果たした。F1参戦2シーズン目となる2026年シーズン、史上最年少でのポール・トゥ・ウィンや破竹の連勝を記録し、10代にしてドライバーズランキング首位に立つ。2026年5月には名誉ある「ロレンツォ・バンディーニ賞」を受賞した、世界が注目するF1の若きスター。
アンドレア・キミ・アントネッリ/Andrea Kimi Antonelli