「芸術の秋」といわれるように、夏の陽射しが盛りを過ぎた時分、見たり触れたりする物事に「美しさ」を強く感じるようになるのはなぜなのか?そのふとした問いを胸に、神奈川県小田原市にある「小田原文化財団 江之浦測候所」へと秋のショートトリップに出かけた。

photos: Kunihisa Kobayashi
words: Kazuhiro Nanyo

唯一無二の世界観を肌で感じる

今回の小田原ドライブにセレクトしたクルマは「GLE 450 d クーペ」。メルセデス・ベンツは2023年、GLE 450 dにISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を搭載し、全モデルの電動化を果たした。SUVモデルのGLEと並行して、GLEクーペも進化を遂げ、独特の美しいスタイリングは維持したまま、ISG搭載による滑らかな走りとオールマイティな安定性にさらに磨きをかけたのだ。

一方で、「小田原文化財団 江之浦測候所」とは、単なる美術館ではない。日本を代表する現代美術作家・杉本博司氏が10年の構想の末に、人類とアートの起源に立ち戻りつつ、国内外への文化芸術の発信地とすべく、さらなる10年をかけて作り上げたアート・サイト。杉本氏の写真・書の作品はもちろんのこと、主に国内から集められ、それぞれ由緒ある古石のインスタレーションが整然一体となって訪れる者に唯一無二の世界観を肌で感じさせてくれる特別な場所だ。

磐石のドライブフィール

東京都内から小田原へ向かうルートは、あえて海沿いを走る西湘バイパスを選んだ。GLE 450 dクーペに組み込まれたISGの働きは、市街地でストップ&ゴーを繰り返すような状況はもちろんのこと、低中速域からアクセルを踏み込んだ再加速の局面でも、即座でスムーズな加速フィーリングを提供してくれる。交通量が比較的多い西湘バイパスのドライブでも、周囲に合わせて自分のペースを容易に保つことができるのは嬉しい。

そこへ加わる視界の高さゆえの見晴らしと、ディーゼルユニットの静粛でありながら力強い伸び──。さらには4MATICによる全輪駆動制御も相まって、巡航ドライブ中の安定感は盤石だ。内装は、チャコールトーンの落ち着いた色使いだが、アンビエントライトによる車内空間のパーソナライズが可能、またナッパレザーの肌触りなどミニマルに抑えつつも上質で洗練された仕上げは特筆に値する。

今回は時折、雨脚が強まる天候だったが、だからこそGLE 450 dクーペが持つ確固たる「動的質感の美しさ」が、ひときわ際立ってくるのを感じた。

圧倒的な美意識の産物

西湘バイパスを通過し、さらに先に行った根府川と真鶴の間。相模湾に少し突き出るようにして江之浦測候所は建っている。元々はみかん畑だったというこの土地が、アート・サイトとして開かれたのは約7年前のことだ。

海沿いを走る街道筋から外れ、曲がりくねった峠道の先で、まず来場者を迎えてくれるのは室町時代に建てられた「明月門」。現代に至るまでの間に幾度かの移築が繰り返され、最終的に東京・青山の根津美術館から江之浦測候所へと移された。普段はクルマでアクセスできない、撮影のための特別なアングルとはいえ、明月門を背景としてGLE 450 dクーペを眺めてみると、ヘッドライト、テールライト、そしてグリルやホイールも一新された意匠ながら、歴史ある建造物との見事な調和を見せ、その存在感に驚かされる。マイナーチェンジを経てさらに端正な印象を増した様子だ。

いざクルマを降りて明月門の左へと歩を進めると、「待合棟」でひと呼吸おいてから見学は始まる。まず最初は、1年でもっとも日照時間が長い夏至の日の朝日が7分ほど差し込む「夏至光遥拝100メートルギャラリー」。海抜100mの高さに建つ、全長100mのギャラリーだ。

相模湾の海に向かって真っ直ぐ延びる、象徴的な直方体のギャラリー内の左手は、床から天井まで視界を遮ることのない巨大ガラスと、目線の先に配された石のインスタレーションが観るものの注意を引く。ひるがえって対局にある右手の壁に目を移すと、今度は杉本氏の代表作の一つである『海景』(大判フィルムカメラで世界各地の海を撮影した作品)が掲げられている。

夏至光遥拝100メートルギャラリーを出て、さらに探索を続けると、石舞台、冬至光遥拝隧道、光学硝子の舞台、そして千利休の「待庵」を写した茶室「雨聴天」など、和の美意識のもっとも原初的な表現から現代の洗練された作品に至るまで、この測候所自体がまるでひとつの巨大なインスタレーションのように感じられる。時間の流れ、人間の意識、さらには抽象の美といった、日常ではなかなか意識し得ないものを体感することができる。

美しい場所と共鳴するクルマ

GLE 450 dクーペを帰路で再び走らせていると、あらためて気づかされることが多々あった。

メルセデス歴代のサルーンや4ドア・クーペから受け継がれた流麗なルーフラインや快適性はそのままに、SUVらしいアイポイントの高さ、AWDならではの安定性に満ちた振舞い、そして小気味よいハンドリングなどは、いずれも一朝一夕に築かれたものではない。

にもかかわらず、すべてが調和して美しくモダンな一台となっている理由には、やはり長きにわたって培われたメルセデス・ベンツ独自の美意識があるのだろう。美しい場所と共鳴し合うクルマだからこそ、その旅の時間はとりわけ上質なものに昇華し得るのだ。

ABOUT CAR

GLE 450 d 4MATIC Coupé Sports(ISG搭載モデル)

見る者の心を奪う流麗なフォルム、モダンでラグジュアリーなインテリアが乗り込むたびに心地よい高揚をもたらす。まさにプレミアムSUV クーペを体現した一台。
GLE 450 d 4MATIC Coupé Sports(ISG搭載モデル)

ABOUT PLACE

小田原文化財団 江之浦測候所

かつてみかん畑だった場所に現代美術作家・杉本博司が設計。ギャラリー、屋外舞台、茶室、庭園などで構成される。見学は事前予約制で、オンラインでチケット購入と同時に午前、午後の部のいずれかを選ぶ形式となっている。
小田原文化財団 江之浦測候所

※ ホイールはメルセデス・ベンツ純正アクセサリーホイールを装着しております。
※ 車両の仕様・装備は、撮影時点の仕様であり、日本仕様と異なる場合があります。