ジャパンモビリティショーで日本初公開された、新型CLA。メルセデス史上もっとも高効率でインテリジェントに進化したと謳われるこの一台は、従来モデルからいかに進化を遂げたのか。開発に関わった二人のエキスパートに、デザイン哲学から物理法則から解き放たれたかのような走りまで、ニューモデルのすべてを訊いた。
photos : Kunihisa Kobayashi
words : Kazuhiro Nanyo
新時代のクーペ
「Feel the Mercedes」をテーマに、ジャパンモビリティショー(以下JMS)で、最新のコンセプトカーやニューモデルを披露したメルセデス・ベンツ。今年の上海モーターショーで発表された「Vision V」やドイツ・アファルターバッハで6月に発表された「CONCEPT AMG GT XX」と並んで、ドイツ・ミュンヘンで発表されたばかりで長年メルセデスのベストセラーの一角を成すGLC初の電気自動車「GLC with EQ Technology」と、フルモデルチェンジを経て電気自動車のラインアップに新たに加わった「CLA with EQ Technology」が日本初公開された。
とくに後者、新型CLAは、「モデル史上、もっともエモーショナルかつ高効率、直感的でインテリジェント」な仕上がりと謳われ、全方位で格段の進化を遂げたモデルとして大きな話題となっている。この新しいCLAの開発プロジェクトを牽引したプロダクトエキスパートのレナ・ブルネンバーグと、CLAのスポークスパーソンを務めるマークス・ナストの二人に、「新型CLAは何が違うのか?」、その核心に迫るべく開発にまつわるエピソードを聞いた。
受け継がれるデザイン哲学
今回の新型が発表される以前からCLAはコンパクトカーとして、「クール、スタイリッシュ、エレガント」という評価をすでに勝ち得ていた。新型にフルモデルチェンジするにあたり、どのようなアプローチを必要としたのだろうか?
「CLAの伝統、ヘリテージを重視し、クーペらしいシルエットを維持すること。そしてエレガントさを保ち、スポーティさや先進的なデザインも守ることです。顧客がCLAを好む理由は、まさにそこにあるのです。ですから私たちは、それらのバリューを高めると同時に、電動化の時代に適応させる必要がありました」と、レナ・ブルネンバーグは強調する。
新たなデザインの方向性は、エクステリアの空力デバイスを一新し、さらに印象的なライトのシグネチャーを創り出すことにあったという。具体的には、アンダーボディ構造はよりスムーズに変更し、ホイールも空力デザインを採用。新フロントフェイスには、アニメーションのように光る142個のスターを散りばめ、リアにはスターデザインとライトバーを組み合わせたコンビネーションランプを備えた。このライトを駆使したデザインはどちらもアイコニックな存在感を放ち、昼夜を問わず、CLAに洗練されたラグジュアリーな雰囲気をまとわせている。
「改良しながらも顧客が慣れ親しんだCLAの先進性を保つこと。新しい世代をとり込みつつブランドイメージを再定義することは、非常にチャレンジングな試みでした。インテリアも非常にラグジュアリーで、MBUXスーパースクリーンやパノラミックルーフなど新たな装備が多数あります」
「EVファースト」という発想転換
このサイズ感ゆえに、新機構や新機軸を盛り込むのにスペースは限られたのではないか? そう思う向きも少なくないかもしれない。しかし、その点については心配無用だったと、マークス・ナストが次のように引き取った。
「このセグメントの車格には、確かにスペースの制約はありますが、より大きな車格のクルマと比較して求められる内容や競合となるブランドも異なります。ですからレナが述べる通り、最終的には顧客のニーズに耳をよく傾けることがもっとも重要なのです」
「そして、新型CLAが従来と異なる点は、開発初期から電気自動車として作られたことです。EVの設計が完成してからICE(内燃機関)仕様に変更という順序でした。つまり従来の、ICE車ありきからEVに転換するのと逆です。ですから新しいCLAはEV特有の典型的なロングホイールベースの設計です。これはICE仕様にも大きな利点で、エンジンを組み込んでも空力性能面の効果はもちろん、室内ではレッグルームやヘッドルームを大きく確保することができました」
異次元のコースティング体験
では新しいCLAならではの走りやパフォーマンスなど、実際にステアリングを握ってみると体感できる進化は、どこに見出すことができるのだろうか? ブルネンバーグは次のように説く。
「とてもスムーズな走りですね。静かで、素晴らしく効率のいい乗り心地です。800Vの電気アーキテクチャをベースとする電動ドライブユニットは、いまだかつてないほど効率に優れています。トランスミッションは2速で、回生ブレーキの強弱はステアリングホイール右側のパドルシフトを使って調整します。ワンペダルドライブに近い設定も可能です」
ナストもこの新型CLAが創り出すドライブ体験のユニークさと効率性に着目する。
「このクルマを運転すると、車輪の転がり方というかコースティング(惰性走行)の感覚が、まるで物理の法則から脱却したかのように感じられます。走らせる度に私がもっとも感動するのはこの点ですね。アクセルから足を離しても、車輪がひたすらすーっと転がり続けるんです」
「それほどまでにエンジニアたちが効率にこだわり、ベアリングや内部摩擦といった細部にまで注意を払っているのです。空力も作用して実際に走らせると、他のクルマに決してない、グライダーのような感覚を味わえます。転がり抵抗を徹底的に研究して、ベアリングだけでなくパワートレインのあらゆる面で抵抗を最小化する。膨大な努力を積み重ねて、驚異的な効率を実現しています」
「効率こそ、新しい通貨」
この高効率コースティングは新型CLAそして新型GLCに採り入れられ、他のモデルにも今後採用されていくという。そしてナストは、「効率」についてもうひとつユニークな指摘をする。
「私たちはチーム内で、“Efficiency is the new currency(効率こそ新しい通貨である)”と言い続けています。というのも今日、電気自動車を購入する際、『航続距離はどのぐらい?』との質問は一般的でも、『エネルギー消費(電費)はどれくらい?』と聞く人は少数派です。つまり航続距離が購入の決め手になっているのですが、今後は変わっていくと思います。ICEのクルマで燃費が大事なのと同じように、電力使用に実際のコストが発生すると消費量が明確に可視化され、人々の注目は航続距離から消費効率に変わっていくはずです」
本質的に大事なのは“消費効率”であるからこそ、電動パワートレインを再設計する際、メルセデス・ベンツは効率を突き詰めることを優先目標としたと、ナストは強調する。
「巨大なバッテリーを積んで、『一充電で2,000km走れる』と謳うのは簡単ですが、例えばガソリン車に700リッターの燃料タンクを積んでその航続距離を実現したとしても、誰もがナンセンスだと思いますよね? EVも同じです」
ブルネンバーグもこの意見に同意を示しつつ、CLAの航続距離に関して重要なファクトを指摘してくれた。
「効率はとても重要ですが、だからと言って短い航続距離に満足するつもりは全くありません。実際、CLAの航続距離792㎞(WLTP)*というのはこのセグメントのEVとしては驚異的で、実はEQSのような上位モデルに相当する長い距離を走ることができるんです」
* 欧州参考値。
日常に寄り添う先進技術
もう1点、ブルネンバーグとナストの二人が新しいCLAのアドバンテージとして挙げるのは、 「日常に違和感を強いない使い勝手」だ。例えば経由地での充電スピードがそのひとつにある。
「10分の充電で約325km走ることが可能で、残量10%から80%までの充電も22分ほど*。スペックだけでは実感が湧きづらいかもしれませんが、急速充電がとにかくスピーディです」(ブルネンバーグ)
「そう、給油と遜色ない感覚ですね。プラグを差してコーヒーを飲んでいると、飲み終わらないうちにスマートフォンにプッシュ通知が来るほどですよ(笑)」(ナスト)
*欧州参考値。
理想のドライブルート
この新しいエクスペリエンスを体現する新型CLAのドライブを堪能するなら、開発プロジェクトに携わった二人はどこにハンドルを向けるのだろうか? インタビューの最後に、そんな質問を投げかけると、まずはブルネンバーグが自らの体験を交え、次のように答えてくれた。
「私の場合、はっきりしています。海岸沿いの道に向かいますね。イタリアの海岸線をドライブするイメージです。パノラミックルーフの効果で太陽光が車内に注ぎ込み、ウインドウを開けてCLAをドライブする瞬間が、本当に気持ちいいんですよ。あるいはより近場なら、ドイツの“黒い森”のワインディングでコーナリングを楽しむのも良いですね」
ナストも、少し考え込んだ後、「ステルヴィオ峠だね」と答えた。
「イタリアとオーストリアの国境にあって、ラリーでも有名な峠です。つづら折りのカーブが多く、取り回しの良いクルマで走るのが最高に楽しい場所です。スポーツカーで走るのが定番でしょうけど、このCLAなら遜色なくドライビングに没頭できます。風景も素晴らしく、静かに佇んで飽くことなく眺めていられる、本当に美しい場所なんです」
ABOUT CAR
CLA 250+ with EQ Technology
全長4,723㎜*、全幅1,855㎜*、全高1,468㎜*
;Resize=(600,450))
* 欧州参考値。
※ 車両の仕様・装備は、撮影時点の仕様であり、日本仕様と異なる場合があります。