メルセデス・マイバッハオーナーが招かれる地中海を巡る豪華な船旅。そこに待ち受けていたのは、クルマを超越した、五感を満たす“ウルトララグジュアリー”な体験だった。イタリアの歴史的要塞でアンベールされた「Mercedes-Maybach S 680 V12 Edition」や「Mercedes-Maybach SL 680 Monogram Series」をはじめとする最新ラインアップの試乗など、極上のクルーズとドライブが醸し出すメルセデス・マイバッハの魅力に迫る。
words : Kuniyasu Inagaki (GQ Japan)
至高の旅への招待
去る9月下旬、「The Grand Mediterranean Escape」なるクルージングイベントが開催された。
これはメルセデス・マイバッハオーナーを対象としたエクスクルーシブなイベントである。イタリア〜フランスを旅する豪華3泊4日の船旅……。しかも、メルセデス・マイバッハが手がけただけあって、クルマ好きをも唸らせる珠玉の内容だった。
メルセデス・マイバッハは、これまでも顧客向けのグローバルイベントを開催しており、たとえば、2024年4月のミラノ・デザイン・ウィークでは、アメリカの写真家・映画監督であるデビッド・ラシャペルによるマイバッハのアート作品の世界初公開を、顧客や厳選されたメディアとともに祝している。
どのイベントも、ブランドがもつ素晴らしき世界を体感すべく、開催場所や世界観、内容などに深くまでこだわるのがポイントだ。メルセデス・マイバッハのオーナーを中心とした、ごく限られた人だけが参加できる、きわめて貴重なイベントなのである。
帆船が紡ぐ、穏やかな時間
The Grand Mediterranean Escapeのために用意された船は、「シークラウドスピリット」なる帆船だ。1931年に誕生したプライベートヨットがルーツで、2021年に就航した最新モデルである。
目前にあるシークラウドスピリットは、古き良き時代の船旅を彷彿とさせるノスタルジックな雰囲気を漂わせている。昨今、流行りの超豪華大型客船では味わえない唯一無二の体験。細部まで演出された旅を用意するあたりは、ラグジュアリーな世界づくりに長けたメルセデス・マイバッハならではと言える。
昼過ぎ、いよいよ出港。初日はデッキでランチを堪能したあと、フリータイム。そして、アペリティフ(食前酒)からのディナーで終了。続く2日目の早朝には、チヴィタヴェッキアの港に入港した。ここはイタリアのラツィオ州ローマ県にある港町で、支倉常長を大使とした慶長遣欧使節も上陸したという。
歴史的舞台でアンベールされる“至宝”
港に停泊した船からは、用意された「Vクラス」の専用送迎車に乗って、「ミケランジェロ要塞」に向かう。この要塞は、海賊の襲撃に備えるため15世紀に建てられた歴史遺産で、その名前からもわかるように、かの彫刻家、ミケランジェロも建設に関わったと言われる。
この日の目的は、The Grand Mediterranean Escapeのメインイベントである特別仕様車、「Mercedes-Maybach S 680 V12 Edition」のアンベール。メディアのみならずメルセデス・マイバッハをこよなく愛するユーザーにも同時に披露するため、参加したオーナーの興奮度は一気に上がる。
1537年に完成したミケランジェロ要塞は、荘厳だ。100年以上の歴史を有するマイバッハにふさわしい会場と言えるだろう。要塞の横に設けられた特設会場には、これから披露されるメルセデス・マイバッハ V12エディションにブラックのベールが被せられている。実車の前には椅子や机が並べられ、横には手の込んだスイーツや色鮮やかなフルーツ、シャンパーニュをはじめとするさまざまなドリンクが用意されている。こうしたもてなしの中で、アンベールを楽しめるとはこの上なく優雅な体験だ。
さらに、台湾出身のオーストラリア人で、世界的に活躍するヴァイオリニスト、レイ・チェンによる演奏も行われ、その豊かな音色の余韻が残るなか、いよいよアンベールの瞬間を迎えた。披露されたメルセデス・マイバッハ V12エディションは、極めて特別なモデルであることがひと目でわかる。
最高峰V12エンジンの矜持
“V12エディション“という名前が与えられているように搭載エンジンは、今や世界的にも希少なV型12気筒ガソリンエンジン。自動車用内燃機関の最高峰とも言うべきV12だが、現在、採用するメーカーはごくわずか。そうしたなかにあってメルセデス・マイバッハが採用し続けるのは究極のラグジュアリーを求めた結果だろう。
V12ならではの動力性能と、マイバッハらしい静粛性の高さは、体感しないとわからない。驚くほど滑らかな走りは、乗るたびに感動を覚える。メルセデス・マイバッハ V12エディションが搭載する6.0リッターV12エンジンは、612psの最高出力と、900Nmの最大トルクを誇り、組み合わされるトランスミッションは9ATで、駆動方式は4MATIC(4WD)。最高速度およそ250km/hに抑えられているものの、0〜100km/hの加速タイムは4.5秒となっている。
今回発表されたV12エディションは、1930年代初頭に発表されたマイバッハ「ツェッペリン」の伝統を称えるモデルだ。ツェッペリンもV12エンジン搭載の超高級車で、当時のドイツでは、多くの人の憧れだったという。
エクステリアは、オブシディアンブラックメタリックとMANUFAKTURオリーブメタリックの2トーンで、ハイテックシルバーメタリックピンストライプがアクセントで入る。落ち着いたカラーリングでありながら、その存在感はどんなシーンでも自然と際立つ。
外装の目玉はCピラーに備わる、24金を使ったゴージャスな専用バッジだ。“12”の文字を刻むことで、V12エディションであることをさりげなく主張する。
インテリアは、サドルブラウンのナッパレザーとハイグロス ブラウンのウォールナットウッドのインテリアトリムを使った上質な仕立てだ。吟味した素材をたっぷり使っただけあって、天然素材ならではのほのかな薫りが、乗るたびに満足度を高める。
内装にもゴールドの専用バッジを設置(リヤセンターコンソール)。特別装備として、シルバーメッキのシャンパーニュフルート、インテリアコンセプトに合わせた専用トランクマット、ハンドメイドのキーギフトボックス、エディション専用キーリングなどを用意する。なお、V12エディションは2026年1月以降に日本導入が予定されている。
港町でマイバッハの真髄を体感
メルセデス・マイバッハ V12エディションを堪能したあと、Vクラスに乗ってチヴィタヴェッキアの港に戻り、再乗船。そして、3日目の朝、イタリアのラ・スペツィアに入港、沖合に停泊したシークラウドスピリットから、小型船に乗り換え岸へ向かう。この日は、The Grand Mediterranean Escapeのもうひとつの目玉イベントである、「マイバッハ ドライビング エクスペリエンス」の体験だ。
用意されたモデルは最新のメルセデス・マイバッハ「SL 680 Monogram Series」に加えて、フラッグシップサルーンの「S 680」、「GLS 600」、そして電気自動車の「EQS 680 SUV」。全モデルを試乗した。
Mercedes-Maybach EQS SUV:異次元の静けさと浮遊感
まずはEQS 680 SUV。ブランド初のピュアEVは、メルセデス・マイバッハらしく実にスムーズ。電気自動車にありがちな、過度な加速感などは一切ナシ。ガソリンモデルの如く、進んでいく。ブレーキングもナチュラルで、ほかのメルセデス・マイバッハモデルと違和感は全く無い。乗り比べて気づいたが、内燃機関を搭載しないピュアEVの静粛性は群を抜いている。徹底した遮音対策が施されているので、キャビンは、ほぼ無音。これほど静かな自動車は、世の中にないだろう。
リヤシートはメルセデス・マイバッハらしくゴージャスで快適。肌触りの良いレザーシートに身を委ねての移動は“極上”という言葉がピッタリだ。極めて静かなキャビンとしなやかな乗り心地によって、もはやクルマとは思えぬ移動時間を楽しめる。目を閉じれば、もはや別世界。自身が浮遊しているかのような錯覚にさえ陥る。
Mercedes-Maybach S-Class:V12の官能と静寂
S 680の試乗は、まずリヤシートへ。試乗車は「オート・ヴォワチュール」と呼ばれる限定モデルで、オートクチュールにインスピレーションを受けた内外装が特徴。日本でも限定3台(世界限定150台)のみ、2023年に販売された。
インテリアはクリスタルホワイトを基調とし、華やかで明るい。個性的なのはナッパレザーとブークレを組み合わせたトリムだ。ブークレとは、ループ状糸から織られた生地で、見た目も触り心地も独特。従来の超高級車にはない、新しい価値を提供する。シート調整はフル電動。バックレストを最大限倒し、かつレッグレストを伸ばせば、クルマとは思えぬリラックスポジションとなる。リヤドアに備わる電動サンシェードをおろせば、ラ・スペツィアの美しい街並みや海を楽しめる。高機能なリラクゼーション機能は押圧も強く、旅の疲れを癒やす。
ステアリングを握ると、EQS 680 SUVも素晴らしかったが、S 680も素晴らしい。V12エンジンならではのスムーズな吹き上がりは、ドラマティックそのもの。アクセルを踏むことで得られる内燃機関が有するドライビング感覚は、ピュアEVとは異なる魅力を提供してくれる。
Mercedes-Maybach GLS:安心感をまとう“陸の豪華客船”
GLS 600は、SUVならではの高いアイポイントが気持ちいい。はじめて走るラ・スペツィアの道も、遠く先を見渡せたので不安は全くない。サスペンションストロークがしっかり確保されているので、乗り心地は格別。ダイナミックセレクトの「マイバッハ」モードを選ぶと、あらゆる凹凸をふんわりといなしてくれる。その乗り心地は、まさにシークラウドスピリットそのもの。“陸の豪華客船”と表現したい、夢見心地を味わえた。
それでいて、コーナリングでは過度なロールを抑えるから想像以上に俊敏な走りを楽しめる。これほどのサイズだと、ワインディングロードを苦手とするモデルも多いが、GLS 600は違う。ひとまわりコンパクトなSUV並みに、コーナーを駆け抜けていくから安心感が高い。
さらに、悪路走破性の高さはメルセデス・マイバッハのラインナップ中でも際立つ。全天候型ゆえに、無敵である。あらゆる面において高い安心感を得られるGLS 600が一台あれば、何役もこなせてしまう。はじめてメルセデス・マイバッハを購入する向きにふさわしい一台と言えよう。
Mercedes-Maybach SL:地中海の風を感じる贅沢
最後は、SL 680 Monogram Series。メルセデス・マイバッハ初の2シーターオープンモデルだ。マイバッハのロゴが散りばめられたソフトトップをはじめ、各所にブランドのこだわりを感じた。
スイッチ操作で簡単に開閉可能なソフトトップをおろし、いざ出発。風の巻き込みはしっかり抑えられているので、髪が乱れたり、帽子が飛ばされる心配は無用。地中海からのほどよい風が心地よい。
もちろん、天候や気分によってスイッチ操作ひとつでソフトトップはクローズ。60km/hまでであれば約15秒で開閉可能だから、急な天候変化にも即座に対応可能だ。
搭載するV8エンジンはパワフルではあるものの、荒々しさとは無縁の穏やかなフィーリング。ラ・スペツィアの美しい街並みをゆったりと流すのがピッタリだ。スポーティなデザインでありながら、ダイナミックセレクトの「マイバッハ」モードを選べばマイルドな乗り味を楽しめる。
ソフトトップを閉じると、キャビンはメルセデス・マイバッハにふさわしい静寂に包まれる。さっきまでのオープンドライブが嘘のようだ。静粛性の高いキャビンでは、Burmesterの高性能オーディオで音楽を楽しみたい。美しくデザインされた複数のスピーカーからは、臨場感あふれるサウンドが流れる。クラシック、ポップス、ロック……ジャンルを問わず、あらゆる音源が、瑞々しい。まるでコンサート会場にいるかのような錯覚に陥る。
終わりのない「最高」の追求
3泊4日の船旅は、フランスのコート・ダジュールにあるサン・トロペに入港しフィナーレを迎えた。
超高級車のカテゴリーには、魅力的なモデルを投入するブランドがいくつかある。あらゆる面を極めただけに、いずれのモデルも甲乙つけがたいが、そうしたなかにあってメルセデス・マイバッハを選ぶべき理由のひとつに、今回のThe Grand Mediterranean Escapeのようなオーナーイベントの開催が挙げられるだろう。
そしてこのウルトララグジュアリーな世界観を日本のオーナーもより身近に体感できるようになる。というのもメルセデス・マイバッハは今後、ますます日本市場に注力していくのである。具体的には一部のメルセデス・ベンツ正規販売店(既存店舗)の中に、メルセデス・マイバッハの世界観を凝縮したMaybachラウンジをオープン予定。加えて、メルセデス・マイバッハのブランド、プロダクトに精通したスタッフも配置する。
メルセデス・マイバッハは、唯一無二のラグジュアリーブランドとして進化を重ねている。クルマそのものはもとより、顧客体験などもブラッシュアップを続けていることは今回のThe Grand Mediterranean Escapeが見事に体現している。
20世紀初頭、創業者のヴィルヘルム・マイバッハとカール・マイバッハが掲げた信条「最高のものから最高のものを創り出す」姿勢に、終わりはないのである。
Mercedes-Maybachとは?
;Resize=(600,450))
※ 車両の仕様・装備は、撮影時点の仕様であり、日本仕様と異なる場合があります。