メルセデス・ベンツが誇るラインナップの中でも、その長き伝統、卓越した走行性能からもっともアイコニックな一台として往年の人気を誇る「Gクラス」。その新機軸としてリリースされたフル電動モデル「G 580 with EQ Technology」の実力を検証する。
photos : Maruo Kono
words : Kazuhiro Nanyo
video:Rightup Inc.
新機軸を打ち出すフル電動モデル
軍用開発に起源をもち、その後民生用モデルとして市販されたW 460から始まる「Gクラス」の輝かしい歴史。2018年にはフルモデルチェンジを果たした第3世代が世界を席巻した。地上のあらゆる路面を走行可能とする究極の走破性と同時に、メルセデス・ベンツのアイコンのひとつとして都会でのラグジュアリーなステータスをも歴代Gクラスは継承し、研磨し続けてきた。そして今回、満を持してフル電動化された「G 580 with EQ Technology(以下G 580)」は、オフロードにおける走行性能のみならず、自動車と人間および環境との関係性を新たな高みにまで押し上げる1台として新たなステータスを確立している。
電気自動車となっても、Gクラスとして外観はほとんど変わっていない。変わるべきでないものと進化すべきものを、G 580 は巧みに選り分けている。まず従来のICEモデルに比べ、最大渡河水深は70㎝から85㎝に向上した。116kWhのバッテリーによる低重心設計を活かし、傾斜のきつい急勾配でもボディが転倒せず走行状態を保てるほどだ。しかもアプローチならびにデパーチャーアングルも、32度/30.7度と、従来のICEモデルに比べ改良されている。バッテリーを守るためのアンダーボディプロテクションは専用開発で、Gクラス独自の頑強さと走破性を約束するラダーフレーム構造とリアのリジッドアクスル構造は受け継がれている。
一方、電気自動車ならではの4輪独立式モーターという駆動方式を採ったがゆえ、可能になった走行機能がいくつかある。その場で車体の向きを最大720度変えることのできる「G-TURN」、そして最小回転半径を大幅に小さくする「G-STEERING」については、オフロード試乗での様子を後述する。いずれも従来の4WD制御技術では考えられなかったほど完全に4輪を独立かつ緻密に制御できるため、剛柔いずれの路面コンディションでも走行性能は大きく刷新されている。
日常の使い勝手も格段にレベルアップ
車内に視点を移すと、最新のMBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクペリエンス)を搭載したことでインフォテイメントやARナビゲーションが一新され、エナジャイジングコンフォート・プログラムなどウェルビーイング向上の機能もアップグレード。運転支援機能についても車線内でポジションを一定に保つレーンキープ機能や、渋滞時に前走車に続いて自動的に再発進する機能を備えるなど、高速道路をより快適かつストレスフリーで走行できるようになった。Burmesterのオーディオも3Dサラウンドシステムに進化したほか、クォーターウインドウ脇のエアベントを長くとることで、車内の気密性とドア閉めの際の堅牢感が改善された。またドアロックにキーレスゴーが備わったことで、乗り降り時の快適性も大幅に高められている。
リア周りでは従来のスペアタイヤケースに代わって、スクエア気味でやや薄くなったデザインボックス(普通充電用ケーブル収納)がG 580の外観上の大きな識別ポイントで、充電ケーブルもここに収まる。また大容量の引き出しを備えることで荷室を“収納トレー化”する「プレミアムラゲッジボード」もオプション設定。このラゲッジボードのうえにはゴルフバッグを水平収納できるなど、荷室の使い勝手もすこぶる進化している。
このクルマでしか味わえない珠玉の走行性能
まずは、GクラスをGクラスたらしめる比類のない走破性を確かめるべく、オフロードへ、G 580を連れ出した。
まずはフラットな非舗装路面で、G-STEERINGを試す。トレール路などを時速25㎞以下で走行中にONにしておくと操舵時、内側後輪の駆動を抑えてピボット気味に利かせることで、操舵量に対して回転半径が圧倒的に小さくなる機能だ。4輪独立モーターだからこそ可能になった動きだ。
次はドライブモードを切り替え、G 580のフルタイム4WD制御と挙動を確かめてみた。スポーツモードを選択しアクセルを踏み込むと、G 580はスムーズに地面を蹴り出すが、最大1164Nmにも達する強大なトルクが瞬発的に立ち上がるので、右足とステアリング操作でパワースライドを維持することができる。
逆にロックモードでは、後輪の空転を抑えつつリアサスペンションを柔らかく沈め、同時に前輪で優しく地面を掻くことで、即座に車体姿勢を安定させる。トレールモードも前輪の駆動配分を強める点は同じながら介入までワンテンポの間があり、ドライバーはよりアクティブに車体姿勢を操ることができる。
どんな悪路も確実に走破する安定感
続いて、もともとは採石場への道として使われていた高台への登り道に入った。雨に濡れた石が露出し、斜度や凹凸以上に難しそうな路面だ。
G 580はとくにグリップの限られた路面で、「オフロードクロール機能」を3段階の速度で設定できる。真ん中の2段目が、歩く速度と同等だ。パドルの「+」「-」を操作するとメーターディスプレイ上に「可変Offroad Creep」の表示が現れ、まずは慎重を期して最徐行域を選び、ゆっくりアプローチ路を登り出した。
途中、車体を傾けて一時停止してみた。センターディスプレイ上では、4輪それぞれのサスペンションがそれぞれに伸びたり縮んだりして荷重のかかり方もバラバラの姿勢である様子が示され、かつ路面は滑りやすい。にもかかわらずフットブレーキを緩めて再発進すると、3トンをわずかに超える巨体は、坂を下がりもせず、また空転する気配もみせず、濡れた岩を踏みしめながらスルリと、アプローチ路を再び登り出した。アクセルペダルでトラクションを足してオーバーライドすると、音も立てずに踏んだ分だけ少しペースを速めては、安定した走行状態を保つ。
センターディスプレイでは水平軸と垂直軸、さらに4輪それぞれの伸縮や駆動配分を、リアルタイムでモニターできる。この左右2WAYの画面ではタイヤ温度や空気圧にも切り替えて表示できるが、左右で同じ情報が重複表示されることはない。正面のメーターディスプレイは、前後と左右のボディの傾き角、そして最大32度に達する操舵角を表示し続け、ドライバーに車体姿勢を正確に伝え続ける。またオフロードコクピット表示を切り替えることで、前輪やフロント周りの路面状況、または車体の全体周囲を後方や360度ビューで、確認することもできる。
下りも登りと同じく、最徐行でオフロードクロールを効かせながら、時折アクセル操作で介入する。何より操舵に集中できるため、予測が難しい路面ながら落ち着いてラインどりに集中できる。各輪それぞれが路面をつかむ動きは、想像以上に柔らかく、またよく伸びるサスペンションによるもので、繊細な駆動制御と相まってG 580は乗員にいささかの不安も与えることなく、悪路での走破性をいとも簡単に引き出させてくれる。コクピットでステアリングを握るドライバーの手元で、あらゆる難条件が自然とコントロール下に収まってくるかのようだ。
従来のICE車のようにデフを介さず、左右もしくは前後の駆動配分を自由自在に操れる4WDだからこそ、足まわりの自由度が大きい点に、従来のどんな4WDとも動的質感の異なるG 580ならではの特徴がある。端的にいって、オフロード/オンロードを問わず乗り心地が柔らくしなやかでありながら、同時に強靭にも仕上げられているのだ。
クールで都会的なシーンでも際立つ存在感
静粛性と芯のある柔和な乗り心地に加えて、排ガスやCO2を排出することのないG 580は、オフロードのみならず都市部でも極上のスムーズなドライバビリティを発揮する。ミルスペックに裏打ちされた堅牢さやタフネスぶりという歴代のGクラスから受け継がれたオーラは、電気自動車となったG 580もまたごく自然にまとっているのである。
類まれなる強靭さを備えるからこそ、都会のラグジュアリーホテルや高級レストランの車寄せなどでその十分過ぎる存在感を漂わせることは確か。しかし同時に、パートナーや友人など、親しい人々を華麗にエスコートするにも最適の選択肢であり続ける点がこのクルマの大きな特徴といえるだろう。
しかしG 580は、都会でも頼もしい最強のSUVとして、従順に振る舞うだけではない。それがサウンドの象徴的機能といえる、「G-ROAR(ロア)」だ。走行中にドライバーの操作に合わせてV8サウンドにインスパイアされたエキゾーストノートを再生、加速、車速、モーター負荷、DYNAMIC SELECTのモードに音調が変化し、また停車時にも車外に向かってまるで唸る(=ロア)ような重低音を放つ。地鳴りにも似たそのサウンドは、オフロードにおける最強モンスターの片鱗を、都会の日常的なシーンで想起させるのである。
高度にインテリジェント化され、電動化を経た今だからこそ、G580はGクラスが歴代にわたって宿す野性を継承するだけでなく、むしろ未来に向かってより大胆に主張しているともいえるだろう。
The all-new electric G-Class
ABOUT CAR
G 580 with EQ Technology Edition 1
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※ 車両情報は2024年12月現在の仕様となり、【MP202501】の車両です。
※ MPとはメルセデス・ベンツ日本にて使用しているモデル識別コードになります。
※ 機能装備はMPごとに異なります。詳しくはメルセデス・ベンツ正規販売店へお問い合わせください。