クリエイティブディレクター、ムラカミカイエさん。デジタルメディアとファッション、カルチャーを横断しながら、国内外の企業やブランドのコンサルティングを手掛ける時代の寵児だ。そんなムラカミさんは「EQE 350 4MATIC SUV Launch Edition」が装備する最先端テクノロジーに対して、いかなる評価を下したのだろうか。
photo: Maruo Kono
words: Kazuhiro Nanyo
direction: Koichi Yamaguchi
車内空間を超えたラグジュアリーな体験
「SUVながら、空気抵抗の少なそうなボディですよね。Cd値でいうと……0.25ですか。昔のウェッジシェイプのスーパーカーよりもスムーズですね、凄い」
EQE 350 4MATIC SUV Launch Editionを目の前にして、ムラカミカイエさんはそう感心する。これまで何台もEVを乗り継いでいる彼をしても、エクステリアデザインの洗練度は衝撃的なようだ。
「スクープ画像でプロポーションを見ていたときから、EQE SUV、メルセデスの電気自動車の中でもサイズ的に一番使い勝手が良さそうだし、気になっていたんですよ」
パワートレインがコンパクトで床下にバッテリーが収まる分、室内長を広くとれるのはEVならではで、室内の快適性にも直結する。そういう合理性のあるプロポーションでありながら、「彫像的にピュア」なところがさすがだという。
この辺りは、EV専用プラットフォームならではのキャブフォワード、かつ伸びやかなプロポーションのなせる業。メルセデスがデザインコンセプトとして掲げる「センシュアル・ピュリティ(官能的純粋)」の具現化でもある。
ボディと一体化したようなシームレスドアハンドルを引いて、車内へアクセスすると、ムラカミカイエさんはインテリアの第一印象を次のように述べた。
「まず運転席に落ち着いてみて、 “インフォテインメント・リッチ”な印象を受けました。EVにありがちな、ミニマルな雰囲気ではない。意匠は凝っているし、質感もこれぞメルセデスと言わんばかりの完成度。でも、自然と落ち着く感じがするのは、なぜなんでしょうね?」
そこで、EQE SUVの特徴のひとつ、車内空間を超えたラグジュアリーな体験を堪能してみることに。早速、ダッシュボード中央の12.8インチ セントラルディスプレイ上で、「エナジャイジング・コンフォート・プログラム」を立ち上げた。
五感に総合的に訴えかけてくる機能性
同プログラムでは、「リフレッシュ」「ウォーム」「ウェルビーイング」といったモードからセレクトすると、それぞれのプログラムに応じて調光や空調の制御が変化し、長距離ドライブや渋滞時などにおいて、車内の快適性を高めてくれる。
まずは「ウェルビーイング」を選んでスタートさせると、パフュームアトマイザーが効き、車内に芳香が漂ってきた。
「おっ、香りがしてきましたね。照明も海の中にいるような薄青色で、シートのベンチレーターまで穏やかになって。空調や音楽やセントラルディスプレイ上の映像まで……すべて連動しているんですね。車内空間で、ここまで五感に総合的に訴えかけてくる仕掛けは初めてです」
実はムラカミカイエさん、メルセデスAMG G63も所有している。このクルマにもアンビエントライトなどの機能が備わっているが、EQE SUVも負けず劣らず、凝っていながら洗練されていることに、純粋に驚いたようだ。各モードの違いを試すため、続いては「フォレスト」を選択してみた。
照明と調光はグリーンのトーン。鳥のさえずりや葉擦れの音が聞こえ、エアコンの風も柔らかくなった。
「とはいえ、この機能は単なる雰囲気づくりだけじゃないでしょう。例えばですが、ブルー系の色は人をリラックスさせるので(路上での)集中力を高める、といったような心理学的作用に裏打ちされていると聞いたことがあります。
僕自身、撮影の立ち合いで早朝に高速道路を延々と走ることがよくあるので、先進運転支援機能にプラスして、車内でこの機能が使えたら、精神的にも安心感は高まりますね」
視覚、聴覚、嗅覚に触覚など、人間の五感を司るあらゆる器官を通じてリラックスのための環境を作り出す機能が、EQE SUVには備わっているのだ。
「車内のようなプライベート空間で、エナジャイジング・コンフォート・プログラムを『バイタリティ』に設定してみたら、ビート感のある音楽と映像、赤い調光で、ベルリンのスパを思い出しました。ベルリンによく出張していた頃、スパなのにクラブイベントさながらにDJがずっと音楽をかけているところがあって。同じ雰囲気がします」
乗り込んだ当初、ムラカミカイエさんは、これらはコンフォート機能というより雰囲気づくりのためのアメニティのように感じていた。だが使っているうちに、むしろEQE SUVのインテリア独特の凄味まではっきり感じたという。
「やはりメルセデスって、感性表現が上手ですね。陳腐な言い方ですけど、五感を意識して、新しいテクノロジーで奇をてらわず、コンフォート設計に取り組んでいる。だからEQE SUVのインテリアの素晴らしさは、テクノロジーと快適性の関係性が不可分なところにある気がします」
テクノロジーがよく練られているからこその上質さ
車内の装備や機能によって醸し出される心地よさや楽しさ。それらを実際に感じながら、EQE SUVを走らせるのが面白くなって、せきを切ったようにムラカミカイエさんが続けた。
「さまざまな国でEVが作られるようになって、スマートフォン的なイージーさこそが、EVらしさや新しさと、捉えられやすいじゃないですか。
その中でEQE SUVのずば抜けた上質感は、異質だと思います。テクノロジーの使い所がよく練られているからこその上質さで、それがこの車内では即座に感じられます」
確かにメタレベルで、先進的テクノロジーの効果を集約したようなところが、EQE SUVにはある。
「エナジャイジング・エアコントロール・プラスに備わる高性能HEPAフィルターの効果か、超微粒子が除去され、外界の気になる匂いもしないので、リビングルームにいるようなプライバシー感があります。
こういう遮蔽性も静粛性も高い空間でないと、エナジャイジング・コンフォート・プログラムのような機能は効果を発揮できませんから、あれが車内コンテンツとして活きているのは、まさにそういうこと。車内のエンタメ化、ホテル化とよくいわれますが、乗り手をニュートラルな状態にしてくれるレベルの高い居住空間だからこそ、リッチな体験価値を得られるのでしょう」
実際、ドアを閉めたときから堅牢さや剛性感は感じられる。乗り込む瞬間から、密閉性の高い建物に入るのに似ていると、ムラカミカイエさんは指摘する。
他にも、12.8インチOLEDセントラルディスプレイは個々の画素が自然発光する有機ELなので、高いコントラストによる視認性の高さと、省電力を両立させている。押す力によって手応えや応答が変化する触覚フィードバックも備わっている。
「まだ歴史の浅いEVメーカーは、従来の高級車のカルチャーを分解して、内装のラグジュアリーさは不要では?といった具合に取捨選択をしています。
一方、EQE SUVのインテリアは敢えて引き算をしないで、テクノロジーで新たに可能になった要素を味方にして、足し算どころか掛け算で体験価値を高めている。
コンフォートや乗り心地をアップデートするにあたって、テクノロジーで何ができるのか? そうしたクルマづくりにおける文化や知見の集積が段違いで、それこそベスト・オア・ナッシング(最善か無か)という思想が伝わってきます。表層的でなく体感として、乗る人の気持ちに寄り添う……そんなエモーショナルな部分にリソースを注ぎ込んでいるんですね」
最新機能を備えながら、違和感なくスムーズになじめる車内空間。先進テクノロジーがもたらす、体験したことのないコンフォート。これらを堪能して、ステアリングを握るムラカミカイエさんの口角が、先ほどまでより明らかに上がっている。
メルセデスの目指す世界が明確に輪郭を現している
最後に試してもらったのは、ドイツのハイエンドオーディオブランドとして知られる「ブルメスター・オーディオ・システム」と、メルセデスが共同開発したという3Dサラウンドサウンドシステム。総計15個のハイパフォーマンススピーカーで構成され、2つのフロント・バススピーカーや音像定位に有効なルーフスピーカーも備える。自分のスマートフォンをブルートゥースでつないで、ムラカミカイエさんがいつもの曲を鳴らし始めた。
「これは恐ろしくキメ細かでありながら、広がり感のある音ですね。ドルビーアトモスが入っているんだ。広大なコンサートホールにいるような感覚です。音離れがよくてニュアンスもクリアだから、ダンスミュージックよりクラシックの交響楽を聴くのにいいかな」
そう話しながら、サラウンドの定位点とイコライザを変えていく。
「音の空間的な拡がりが、車内空間を超えています。ただEVで静粛性が高いだけじゃなく、“キューン”とか“ヒュイーン”といったEV特有の高周波音を抑え込んでいるから、結果的に耳に心地よい経験ができる」
最後に、EQE 350 4MATIC SUV Launch Editionに触れてみた印象を、ムラカミカイエさんならどうまとめるのか聞いてみた。
「もしかしたら、内燃機関の時代からメルセデスが目指していたものはこれか?と思える1台でした。車内で体感できるコンフォートさや、穏やかで足まわりが柔らかく動くフットワーク、なめらかで力強いパワー感まで、メルセデスのDNAがEVやデジタル時代のテクノロジーの中で、水を得た魚のようです。
メルセデスの目指す上質な世界やビジョンがより澄まされ、明確に輪郭を現したようですね。いや、参りました」
テクノロジーを自家薬籠中のものとするだけでなく、それを利するインテリジェンスの力業によって、またひとつ高い到達点を、EQE SUVは示してきたのだ。
PROFILE
ムラカミカイエ / Kaie Murakami
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ABOUT CAR
EQE 350 4MATIC SUV Launch Edition
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※ 車両の仕様・装備は、撮影時点の仕様であり、日本仕様と異なる場合があります。
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