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実際の事故現場で起きている苛酷な事実が、メルセデス・ベンツに立ち止まることを許しませんでした。
1953年、世界で初めて衝撃吸収構造ボディを量産車の180モデルに採用して以来、メルセデス・ベンツは、一貫してこのボディコンセプトを継承してきました。
現在では、構造、効果ともに180モデルの当時に比べて飛躍的な進化を遂げていることは言うまでもありません。1959年に始まった本格的な衝突実験、1969年の活動開始から現在までに3,000件以上もの事例を扱ってきた事故調査活動、1974年から加わったオフセット衝突実験。
次々に推進してきたこれらの取り組みを背景として、数々の技術革新が行われたからです。
しかし、衝撃を効果的に吸収する前後のクラッシャブルゾーンと、大きな衝撃にも変形しにくい堅牢なキャビンによって、乗員への影響を最小限にとどめるという、かつてベラ・バレニーが発案した衝撃吸収構造ボディのコンセプトは、いまなお不変。
メルセデス・ベンツにおけるパッシブセーフティの揺るぎない母体であり、世界の自動車のベンチマークなのです。
三叉式緩衝機構(1979年)
三叉式緩衝機構(1979年)
赤いフォーク状の部分が、オフセット衝突時にボディ正面の一部に集中する大きな衝撃を車体の外側や中心部など3方向へ分散。キャビンの変形を最小限に抑えます。
実際のポール衝突と実験結果
実際のポール衝突と実験結果
前方からの衝撃がほぼ1点に集中するのが電柱などのポール衝突です。ポール衝突実験による結果と、実際に柱に衝突した事故車両に差がなく、どちらもキャビンがほとんど変形していないことがわかります。
75%がオフセット衝突という事実がもたらした進化。
1953年に生まれたメルセデス・ベンツの衝撃吸収構造ボディは、実際の事故調査と様々な衝突実験による研究を重ね、着々と進化していきました。そして1974年、正面衝突の約75%がオフセット衝突であるという、実際の事故調査による事実を受け、その事故形態を再現する衝突実験が始まりました。このときから、ボディの安全構造はさらに大きな飛躍を遂げることになるのです。
1979年のSクラスから採用が始まった三叉式緩衝機構は、まさにオフセット衝突実験を繰り返して開発されたものでした。ボディ前面の一部に集中する大きな衝撃を分散してボディ全体に逃がし、キャビンの変形を最小限にとどめるための構造です。この技術はさらに進化して、エンジンルームとキャビンを隔てる頑強な湾曲構造のカーブドバルクヘッドを生み出しました。これにより、衝撃の分散効率を大幅に高めるほか、エンジンやトランスミッション部のキャビン側への侵入を抑制することを可能にしました。
様々な衝突実験
様々な衝突実験
クラッシャブルゾーンの有効活用。
1995年には、インテグラルサポートフレームがEクラスに最初に採用されました。
このフレームは、エンジンやステアリングユニット、フロントサスペンションの支持部などを一体でマウントしたもので、前方からの大きな衝撃を受けると、車体の下方に滑り込むように移動。クラッシャブルゾーンの有効な変形を阻害しないように、そしてエンジンルーム内の部品がキャビン側に突出しないよう配慮されています。
またAクラスでは、エンジンやトランスミッションの一部を床下にレイアウトしたサンドイッチコンセプトを採用。前方からの大きな衝撃を受けると、エンジンなどがフロアの下方に滑り落ちるように移動する構造により、全長が3,615mmから3,785mmのコンパクトなボディながら、ミディアムクラスの車にも匹敵する衝突安全性を実現しています。
カーブドバルクヘッド
カーブドバルクヘッド
エンジンルームとキャビンを隔てる頑強な湾曲構造のカーブドバルクヘッド。キャビンの変形や、エンジンなどのキャビン側への侵入を抑制します。
側面衝突、後面衝突への対応。
「乗員が極めて大きなダメージを負った事故の約43%が側面衝突」。これも実際の事故調査から判明した事実でした。そのため、メルセデス・ベンツでは、頑強なドア、多層構造のピラー、高強度のルーフレールやサイドメンバー、高剛性のフロア構造などを開発し、側方からの衝撃にも変形しにくいキャビンの強さを追求しています。
後方からの衝撃については、乗員の生存空間の変形を最小限に抑えると同時に、燃料タンク自体の気密性を高め、かつ衝突の影響を受けにくい位置にレイアウトしています。これは、衝突事故による車両火災の多くが、タンクからの燃料漏れが原因とされているからにほかなりません。